グローバル経営支援セミナー
トルコ編
欧州とアジアの経済交流起点、トルコ経済の現状と投資対象としての魅力
― 進出事例にみるM&A、JVの活用と留意点 ―
【講演Ⅱ】
「トルコの会計・税務最新事情と
M&A、JVの留意点」
あずさ監査法人パートナーの小宮祐二氏は、認定税務監査人が税務申告書の適正性を保証する「タックス・サーティフィケーション」、海外からの借入や通関前に対価支払が終了していない輸入品に課せられる財源使用税、約1%と高額な印紙税など、特徴的な税制を解説。会計基準は「トルコ基準とIFRS、日本基準には相違点が多い」と注意を促した。13年からは大会社を対象に法定監査、IFRSが導入されている。
M&Aを巡っては「トルコの持ち株会社を利用した買収は通常税務上は効率的でない」と指摘した。持ち株形態は、外国への配当源泉税率が5%と低く定められたドイツなどの会社を主体にする方法もある。資金調達は、過少資本税制、利息等に対する源泉所得税、付加価値税等の観点から、親会社等からの直接借り入れより、銀行借り入れの方が有利だ。
小宮氏は、日本企業のM&Aは、現地販売代理店の買収例が多かったが、最近は事業会社買収の成功例も増えている、と分析。JVについては地場大手有力企業と組むことが多いが「相互の強みを活かして戦略を共有し、トップ同士の信頼関係を構築することが成功のカギです」と話した。
【講演Ⅲ】
「トルコにおける事業展開
― JV、M&Aを中心に ―」
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー弁護士、山神理氏は、ダイナミックに経済が動くトルコで迅速に事業展開する手段として検討されているJV、M&Aの留意点を解説。「トルコ企業の意思決定はトップダウンで、ボトムアップ型の日本との違いを説明してスケジュールを進めることが必要。最後はトップ同士の信頼関係構築で一気に交渉が動くこともあります」と、トルコでの交渉の特色について語った。
合弁契約は、出資比率が最大のポイントになるが、両国とも互いの体面を尊重する文化があり、50対50での妥結も多い。そのため、デッドロックへの備えは重要で、協議の実効性を担保するためにはJV解消の条項は必要と強調した。また、一般的な契約条項の情報収集権についても「オペレーションが、トルコ側にお任せとなってブラックボックス化すると、問題発生時に対応できない。日頃から収集権をきちんと行使すべき」と指摘した。さらに、M&Aにおける表明保証の問題やトルコにおける会社のオペレーション上の留意点を指摘した山神氏は「トルコは魅力ある国。制度などの細かな違いは知っていれば乗り越えることができます」と過度な不安を払拭した。
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フォーラムの最後にあいさつに立ったトルコ共和国首相府投資促進機関のシニアプロジェクトディレクター日本担当のセダ・カリヨンジュ氏は「トルコ経済は過去10年で大きく成長し、日本からの投資も増えている。首相同士の信頼もあり、両国はさらに緊密になるでしょう」と、今後の両国関係進展に期待を込めて、締めくくった。