北朝鮮崩壊へアメリカが隠し持つ「極秘計画」 約20年間に作られていた「COPLAN 5029」

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詳細は極秘扱いのままだが、内容に詳しい安全保障アナリストによると、政権側近によるクーデター、対立する派閥間の内戦、自然災害、国境を越えた難民の大量流入など、さまざまな不測の事態を考慮しているという。OPLAN 5029は、軍や科学者のチームを派遣して、北朝鮮の核兵器を回収・確保する計画をもカバーしていると、安全保障の専門家は語る。

同計画は、北朝鮮の政権崩壊に備えるために、韓国の保守系金泳三政権がその政権末期の1997年に結んだ包括的合意に基づいている。合意は、北朝鮮の建国者金日成の死に続いて起こった大規模な飢饉およびそれに伴って生じた核兵器開発をめぐる最初の危機をきっかけとする。合意は、北朝鮮での治安崩壊に対処する大枠を定めた概念計画(CONPLAN)5029となった。

噛み合わない米韓それぞれの思惑

1998年の早期に政権をとった韓国の革新系金大中政権の関心事は、むしろ北朝鮮との和解と再統合の理想を追い求めることだった。しかしアメリカはCONPLANを、軍隊および装備の流れと、軍隊の指揮官を定める作戦計画へと転換することを要求した。

2003年に政権をとった革新系の盧武鉉政権に対して提示されたアメリカの提案では、北朝鮮との戦争に対応するために組織された米韓連合司令部の場合と同様、軍隊はアメリカ司令官の指揮下に置かれていた。

同政権下の韓国国家安全保障会議は例外的な公開の声明を出して、「韓国の主権を犯す」としてアメリカの計画を拒絶した。その後困難な協議が続き、李明博大統領のもと保守が政権をとる2009年まで計画は合意されなかった。韓国軍を指揮するアメリカの軍事計画者は、大韓民国国軍側と協議して、アメリカの司令官が指揮する何十万の兵士を国境に送る詳細なプランを策定した。

現実はもっと複雑だった。ベテラン外務官僚の千英宇は2010年10月、2013年初頭まで務めることになる、李大統領の外交安保首席秘書官の地位に就いて間もないころOPLAN 5029について知らされた。千は、計画は国際システムも、法的状況も、北朝鮮国内の社会的力学も考慮しておらず「非現実的」であると感じた。

千は「いずれにせよ、アメリカが北朝鮮で軍事作戦を指揮することは許されない」と話す。計画は、アメリカの支援を受けて韓国軍が治安安定作戦を受け持ち、アメリカ軍が大量破壊兵器を確保するうえで中心的役割を演じることを想定している。

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