グローバル経営支援セミナー
コロンビア・チリ編
中南米地域経済の現状と展望
― 中南米市場攻略の鍵 存在感増す太平洋同盟の可能性とリスク検証 ―
【講演Ⅰ】
「コロンビアにおける投資環境
及びビジネスチャンス」
海外からの投資誘致、非伝統輸出、観光等を促進する国家機関、コロンビア貿易振興機構の日本事務所代表、和合ヒロシ氏は「コロンビアは市場規模、マクロ経済の安定、成長潜在力等の観点で地域の上位国」と強調した。投資誘致政策では、海外輸出と国内市場販売の両方が認められている自由貿易地域の制度があり、税制インセンティブも供与。PPP(官民連携)の法制度も整い、公共側の役割や請負者選定手続きも明確にしている。
投資先も多彩だ。安定した気候の恩恵でGDPの6.5%を占めるアグリビジネス、現在は年間370万台、2020年には700万台の出荷を見込む自動車のほか、2007年から5年間で1日当たり産油量が77%も伸びた石油、非在来型資源などの資源関連は特に注目される。近隣国への電力輸出ができる豊富な発電量を誇る水力、電源多様化に向けた火力など電力開発も大型プロジェクトが計画されている。交通インフラは2014年にGDPの3%、90億ドル(うち公共30億ドル、PPP60億ドル)を目標に、道路、鉄道、港湾、河川交通、空港等の整備を推進する。和合氏は「豊富な経験、技術、能力を有する日系企業が参入する機会は多いと思う」と訴えた。
【基調講演Ⅱ】
「『中南米の優等生』チリという選択肢
~投資環境・経済状況」
三菱東京UFJ銀行サンチャゴ支店上席支店長代理の戎野正純氏は、「中南米の優等生」とされるチリの魅力を解説、日系企業のビジネスチャンスを指摘した。東はアンデス山脈、西は太平洋、北は砂漠、南は南極に囲まれたチリは、ドイツ・東欧系の移民が多いことから、ラテン気質とやや異なる内気でまじめな国民性が特徴だ。1人当たりGDPは1万5000ドルを超え、人口200万人以上の中南米国ではトップ。1980年代から新自由主義経済政策を実践し「チリの奇跡」と呼ばれる経済発展を遂げた。財務格付けも先進国並みの「AAマイナス/Aa3」。治安も優れている。開放経済政策によって、アジアとは「太平洋を挟んだ隣国」として密接な関係を保っている。
一方、社会格差を示すジニ係数はOECD加盟国最大であり、エネルギーの輸入依存なども課題。その解決に向けて政府は、中流層の消費拡大、教育産業のすそ野拡大、発電所や淡水化プラントといったプロジェクトを進める。戎野氏は「日本企業が強みを持つ分野も多く、ビジネスチャンスがある。また、チリから入って中南米市場のノウハウを獲得、周辺国へ展開する戦略もある」と述べた。
【講演Ⅱ】
「チリでの投資機会」
チリ貿易振興局日本オフィスディレクター、ヘルマン・ベック氏は、世界中から投資を集めるチリのビジネス環境について講演。「チリは日本企業にとって大きなポテンシャルがある」と語った。チリは、世界の輸出市場の93%、GDPの86%、人口の62%をカバーする60カ国とFTAを締結している。2012年の海外直接投資が世界全体ではマイナスに沈む中、チリへの投資は32.2%も伸び、国連の世界投資報告書では、GDPに占める直接投資誘致の割合で世界6位にランクされた。背景には、経済自由度数世界7位という優れたビジネス環境がある。
日本からの投資は銅鉱山を中心に盛んで、2011年にはチリへの国別投資額で1位になった。ベック氏は「銅以外にも、石炭やほかの鉱物資源、鉱業関連のエンジニアリングなども有望な投資先」と訴える。また、PPPによって整備を図る交通インフラのほか、再生可能エネルギー分野の拡大を目指す電力セクター、ワインで知られるアグリビジネス、日本への養殖サーモンの供給で実績のある食品産業への投資機会も紹介。「チリは安全で、信頼できるパートナーであり、世界に開かれた国、と評価されている」とアピールした。