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経営と現場を結ぶCX戦略のこれから CXフォーラム2020

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  • セミナーレポート 制作:東洋経済ブランドスタジオ
モノ売りからサービス提供、サブスクリプションへとビジネスモデルが変化し、ニーズが多様化する中で、企業は、顧客の声を聞き、市場の動きを的確に捉えて、CX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験価値)を高め、長期的、持続的に成長する経営戦略が求められている。2016年に始まり、4回目を迎えた今年の「CXフォーラム」は、IT通信、金融、製造などさまざまな業界から約250人が参加。それぞれの企業のCXに対する取り組みの紹介とともに、今後のCX戦略のあり方を探った。

共催:東洋経済新報社、ラーニングイット
協賛:セールスフォース・ドットコム、富士通コミュニケーションサービス、日本電信電話(NTT)、TMJ
後援:日本コールセンター協会、日本マーケティング協会、日本ダイレクトマーケティング学会、アイ・エム・プレス

Opening Greetings

ラーニングイット
代表取締役
畑中 伸介氏

4年前の第1回は、CXに取り組む企業も少なく、事例紹介企業探しに苦労したと振り返ったラーニングイットの畑中伸介氏は、今回参加者が所属する企業の約4割がCXの実行フェーズにあるとするアンケート結果を示し、「今回のフォーラムを通じて企業の成長戦略の柱となるCXのあり方を考えたい。また経営と現場を結ぶ取り組みがキーになる」と語った。

Keynote
再考:日本サービス立国論
~顧客の見えない姿を捉え、新たな価値を創造せよ~

小西美術工藝社
代表取締役社長
デービッド・アトキンソン氏

金融アナリストから、文化財修理会社に転じたデービッド・アトキンソン氏は、データを分析して、問題の本質を捉えることの重要性を訴えた。「顧客からの評価も知らないまま、経営不振にあった」という同社で、取引先の評価を聞き、指摘された課題を改善することから着手。採算面の問題もデータで検証し、損益への影響が大きいものから対策を講じ、立て直した。さらに、活用を推進することで文化財保全の社会経済的意義を高めようと、観光行政にも関与。観光大国でもフランスのおもてなしの評価は高くないと、おもてなしを訴求して訪日客を増やそうという、思い込みの観光戦略に疑問を示し、「海外からの旅行者が日本を選ばない理由をデータで明らかにすべき」と述べた。日本経済の最大課題、サービス業の生産性の低さについても「サービスに対価を払いたがらない日本特有の事情」ではなく、企業規模が小さいことが原因なのはデータで明らかだと主張。「日本ではエピソードベースで物事を語る傾向が強い。固定観念を排すれば、無限の可能性が広がるはず」と語った。

協賛セッション(1)
顧客中心型CXと変革に向けた経営アプローチ

セールスフォース・ドットコム
エバンジェリスト/プリンシパル
ビジネスコンサルタント
熊村 剛輔氏

セールスフォース・ドットコムの熊村剛輔氏は、CXについて、店舗やメールなどさまざまな顧客接点における体験の連鎖と定義。時間経過とともに関わり合いを重ね、ロイヤルカスタマーになってもらえるように「時折、驚くような体験を提供して顧客の感情、期待値を高める顧客体験の管理が求められる」と述べた。商品に値引きなどのサービスを付け加えて提供するだけでは、消耗戦になってしまう。そこで「顧客が望む体験で、商品・サービスをくるみ、価値を高める必要がある」という考え方を紹介。実際に消費者の3分の2は、優れた顧客体験に金銭的対価を払ってもよいと考えているというデータも示した。また、最新のマーケティングは、デジタル化した顧客接点で収集したデータを使い、顧客の姿を見極め、オフラインを含めてベストな顧客体験を提供する傾向にあると解説。同社製品を導入して、店舗とデジタルをつなぎ、顧客プロファイルを共有。SNSでのプロモーションやフォローアップ、来店時の対応といった、最高のおもてなしを提供する新時代百貨店モデルのデモを紹介した。

特別講演(1)
CX実現に向けた三井住友カードのデジタルトランスフォーメーション

三井住友カード
執行役員
マーケティング統括部長
佐々木 丈也氏

キャッシュレス化を推進する三井住友カードの佐々木丈也氏は、デジタル変革(DX)を進め、よりよい顧客体験の提供を目指した取り組みを説明した。同社は、事業側の発想で、顧客ニーズに合わないプロモーションを発信してきたことで、メールサービスの許諾率が低下する課題が発生。改善に向け、マーケティングや事業、コールセンター部門の若手キーマンらで作成したCXシナリオに沿った顧客コミュニケーションにより、メール許諾率やカード利用率を向上させた。また、カード利用場所の変化などから転居を予測し、顧客に住所変更届を促すなど、プロアクティブな対応を推進するためのAI活用も推進。AI活用アイデアコンテストなどを仕掛け、数少なかったAI人材も増やしてきた。各部署がそれぞれのKPI達成を優先すれば、CXが阻害される可能性も指摘した佐々木氏は「CX向上には、組織横断的体制が大切」と強調。テクノロジー導入でデータを活用する組織のDXを進めながら「顧客に関する知見、CX活動を全社で共有する体制を整えたい」と語った。

協賛セッション(2)
~企業と顧客をつなぎ、そして成功に導く~
サブスクリプション時代の進化型コンタクトセンター

富士通コミュニケーションサービス
CXサービス統括部
サービスイノベーション推進部
担当課長
横田 喜子氏
富士通コミュニケーションサービス
CXサービス統括部
セールスマーケティングサービス部
スーパーバイザー
福井 麻里奈氏

コンタクトセンター運営を手がける富士通コミュニケーションサービスの横田喜子氏は、モノ売りからサブスクリプションへというビジネスモデルの変化の中で、契約を継続してもらい、顧客生涯価値を最大化するには「顧客に卓越した顧客体験と成果を提供し、継続的関係を築く、カスタマーサクセスマネジメント(CSM)が重要」と語った。そのカギになる顧客とのコミュニケーションの質的向上のため、同社は、人ならではのホスピタリティーがCXに与える影響を示す独自指標「HC‐X」(ヒューマン・コンタクト・エクスペリエンス)を含め、顧客データを最大限に活用したCSMを実践している。福井麻里奈氏は、コンタクトセンターでのCSMには「営業部門などと連携した情報収集と、未来を予測した対応」が必要と強調。導入支援や解約リスク対策の充実、HC‐Xを使った信頼醸成で顧客から収集する情報の質と量の向上、予算検討する戦略部門なども統合した組織的カスタマージャーニーを描き多様な文脈で顧客企業を捉える、の3点をポイントに挙げ、実際に同社のCSMが、サービス契約継続期間を延ばすことをデータで示した。

特別講演(2)
シスコシステムズのCX戦略

シスコシステムズ
業務執行役員
カスタマーサクセス ディレクター
立山 東氏

企業向けのネットワークやコラボレーションなど「つながる」ソリューションを提供してきたIT大手、シスコシステムズの立山東氏は、ハードからソフトによる機能提供へという流れを受けた、同社のCXへの取り組みを紹介した。「製品・サービスを愛してもらいたいというCXの哲学はあっても、それを実現する組織と仕組みがなかった」という同社は、数年前から他社にCXを学び、保守サービス部門を取り込んだCX組織を整備。サービス化による顧客サイクルの変化は「近年で最大のチャンス」と、少人数セッションや顧客訪問など「あえて非効率な取り組み」でファンを増やし、ありたい姿を目指してきた。世界に6万社いるパートナー企業もCX活動に巻き込むため、計1万5000時間以上かけたインタビューで要望を聞き、顧客視点の利用事例集などのツールをまとめたポータルも開発。2020年度は長期計画のCX実装段階を迎える。社内理解を得ることに苦労した経験から「レガシーを守りたい気持ちを抑え、新たなことに取り組むには、トップのメッセージが大切」と振り返った。

協賛セッション(3)
最高のCXに向けたデジタルマーケティングの活用

NTTドコモ
デジタルマーケティング推進部
会員エンゲージメント担当部長
南部 美貴氏

NTTドコモの南部美貴氏は、携帯電話契約者以外も含め、約7300万のdポイント会員を顧客としたCXについて話した。決済のほか、予約から購買までワンストップ機能を備えるd払いアプリで便利な購入体験を実現。5G通信の高画質VRライブ体験などを提供する。また、顧客情報を活用して、最適なタイミングと手段によるアプローチで、ポイント期限切れの「もったいない」をなくすといった価値を提供するデジタルマーケティングも推進。「ドコモを好きになってもらい、継続のサイクルを回していきたい」と語った。

CX with you
~顧客理解の先にあるもの~

NTTマーケティングアクト
カスタマーソリューション事業推進部
企画部門
ビジネスプラットフォーム担当・担当課長
米林 敏幸氏

コンタクトセンターを運営するNTTマーケティングアクトの米林敏幸氏は「VOCサポートセンター」に集約した同社のノウハウと、顧客との通話内容を網羅的に把握できるテクノロジーのセットで、VOC(顧客の声)活用を高度化。コールセンターの課題と、全社的経営課題双方のCX向上を連携させる仕組みが重要と強調した。そのために、課題を明確化して分析テーマを設定、分析結果から運用を改善し、検証する。さらに顧客理解を基に運営のあるべきビジョンを策定し、求める成果を意識した施策により「CXが経営貢献につながる」と述べた。

特別講演(3)
お客様に“喜びと感動と笑顔”のスパイラルを生み出す理念経営

HEAVEN Japan
代表取締役
松田 崇氏

ネット通販を中心に女性用下着の製造小売り事業を展開するHEAVEN Japanの松田崇氏は「お客様が満足して、喜んでもらえる商品を届けることで長く続く企業になれると信じている」と語った。トラック運転手だった松田氏は、米国旅行中に立ち寄ったフリーマーケットで、妻が「日本にはなかなかない」と下着に魅せられていたことをヒントに2003年に起業。厳しい経営状況が続いたが、感謝がつづられたEC顧客のレビューを見て「うれしくて、諦められなかった」と振り返った。顧客に喜ばれ、従業員が安心して働ける会社という理念で、経営を続けると、創業6、7年目ごろから軌道に乗った。通販はフィッティングができないという顧客の声には、サイズ交換・返品無料のサービスと、コールセンターでのきめ細かいフィッティング相談で対応。15年からは、正しいサイズを測り、それぞれに合う下着を提案する「試着体感サロン」をオープンした。「企業理念の、お客様に満足してもらうことがいちばん大切。商品が売れるのは、その結果だと思っている」と語った。

協賛セッション(4)
CX向上、次世代CC活用の戦略と個別活動のリンク

TMJ
マーケティング推進本部
本部長
島田 將英氏

セコムグループでCXのデザインやコールセンターのサービスを展開するTMJの島田將英氏は、CX推進組織が、実行力を向上させるための4つのカギを語った。まず課題発見のために分析をして、課題解決するアプローチは失敗が多いと指摘。分析は仮説検証のために行うことが大事だとして、仮説を設定後、分析を行い、ソリューションなどを導入実施、検証するサイクルを推奨した。次に、プランについては、全体最適よりも、ゴール(ありたい姿)に向けて、各サービス領域の実績を積み上げることのほうが重要と強調。VOCやナレッジなどさまざまな領域での取り組みの進捗を把握するために利用できる、同社開発のアセスメントシートを紹介した。3つ目に、実行体制については、CXプロジェクトの統括者以外に、さまざまな部門・組織からCXの要望、取り組みを受け止め、中立的視点で分析・調整するCXリーダーを配置することを提案。CXリーダーは、現場のコールセンターのミドルマネジメント層から育成を図っていくと説明した。4つ目に、効果検証は事業へのインパクトだけでなく、CXの継続性も考慮すべきと強調。同社が行った支援の事例を紹介した。

ディスカッション
経営と現場を結ぶCX戦略のこれから

ディスカッションでは、ラーニングイットの畑中伸介氏がモデレーターを務め、CX強化を進めるうえでの組織的なハードルや、それを克服する取り組みを協賛セッションで講演した4氏に聞いた。TMJの島田將英氏は「最大の問題は人材不足」と強調。CXコーディネートのスキルは確立されておらず、現在のCXリーダーからOJT的に学ぶ取り組みも進めるが「時間がかかる」と話した。同様の問題を抱えるNTTマーケティングアクトの米林敏幸氏は、社内で自利利他的なCXの共通ビジョンを共有する仲間づくりを、VOCのファクトで裏付けながら進めて「全社展開する体系的仕組みを整えたい」と語った。富士通コミュニケーションサービスの横田喜子氏は、縦割り組織が顧客のカスタマージャーニーに沿った一気通貫のCXを妨げると指摘。CXと各部門の関わりや効果を分析結果で示し、説得力を高めることを促した。セールスフォース・ドットコムの熊村剛輔氏も、数字でCXの意義を語り、社内の意識を変革する必要を指摘。データを使う際は共通の顧客像をデータによって定義し、組織全体の認識を合わせることを求めた。