カーボン・プラスチックフリー空港実現目指す 地域・国際社会と共生しながら取り組みを推進

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世界的にも注目されているのが、水素エネルギーの利活用だ。水素グリッドプロジェクトを通じて関係者と連携して国内の空港で初めて関空に大規模水素ステーションを設置。貨物地区では燃料電池フォークリフト22台が稼働している。「燃料電池フォークリフトはCO2排出量を大きく削減できると同時に、作業効率や作業環境の改善にもつながっています。課題はコスト面ですが、環境負荷低減効果と経済性のバランスを見極めながら水素エネルギーの普及にも寄与したいですね」と伊藤氏は使命感をにじませる。

イワタニ水素ステーション 関西国際空港

今年は伊丹空港にも水素ステーションが開所。業務用に燃料電池自動車を導入し、空港車両のZEV(Zero Emission Vehicle)化を推進している。国内のみならず海外からの関心も高く、今後もスマートエアポートとして水素利活用を支援していく。

燃料電池フォークリフト

カーボンフリー・プラスチックフリー空港を目指す

「資源循環」の取り組みでは、プラスチックゴミの削減を重視する。「マイクロプラスチックによる海洋汚染が世界的に問題になっていますが、2つの海上空港を擁し、海洋との関わりが深い当社にとっても重要な課題です」と伊藤氏。環境宣言には、環境省が目標達成年次としている30年より前の22年に使い捨てプラスチックを25%削減する目標を掲げている。20年4月より、直営免税店および直営物販店の約30店舗で、使用しているビニール製ショッピングバッグを紙や生物由来のバッグに切り替える。

グループ会社とともに社内で始めた環境アンバサダー活動の1つ「ノーペットボトルデー」もその一例。「週1回、ペットボトル飲料ではなくマグカップや水筒の使用に替えることで、社員の自発的な行動変容を促す狙いです」と語る伊藤氏。関空には、その成り立ちから空港内に廃棄物や排水の処理施設を設置するなどハードを充実させている。一方で、定期的な現場パトロールやエネルギーデータの分析による省エネオペレーションの改善に取り組んだり、環境啓発・教育によって意識改革を図るなど、地道な活動も続けている。

さらに「周辺環境との共生」においては、大阪湾の海域生物の生息環境の創出に取り組んでいる。関空では空港島造成時から緩傾斜石積護岸を採用し、海藻が繁茂する藻場の造成に成功している。近年、CO2の吸収源として海洋生物による「ブルーカーボン生態系」が世界的にも注目を集めており、新たな脱炭素の選択肢としても藻場の活用が期待される。

藻場

地域社会との共存共栄を大切にする

環境のみならず、地域の人々にも目を向ける。「航空機の騒音や水質などを調査・公表し、地域社会との信頼関係を大切にしながら環境対策に取り組んでいます」と伊藤氏は語る。こうした多岐にわたる取り組みが、先述のACAの取得にもつながった。「とくにレベル3は、当社だけでなく空港に関わる事業者からの排出も含め、空港全体のCO2排出量削減計画を策定することが求められます。そのため官公庁や空港事業者、テナントの方々と『エアポート環境推進協議会』を組織して目標や課題のほかに好事例も共有し、さまざまな施策に取り組んでいます」。

計画の3年目となる20年度は、各取り組みをいっそう本格化させる。「環境負荷低減の取り組みは多岐にわたります。環境モニタリングを行いつつ、カーボンフリー・プラスチックフリー空港の実現に向けた取り組みを推進し、地域・国際社会と共存共栄していくことが、持続可能な空港の姿であると信じています」と展望した伊藤氏。社会の課題解決と空港の発展を両立させ、さらなる飛躍を目指す。