早稲田大学の社会人講座 スマートエスイー AI・IoT分野のイノベーション人材創出を

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実際に講義の様子を見ると、大きなテーブルの上にセンサーやモーターを並べて作業をしているグループなどもある。「修了制作についても、業務などで直面している実問題を持ち込み、マンツーマン指導で制作・研究を行います」と鷲崎氏は話す。学んださまざまな手法やツールを総合的に活用する場となるが、「成果が出なければやり直しもあります」というから、決しておざなりなものではない。

実際の修了制作を見るとその水準の高さに驚く。ある食品メーカー系のIT企業に勤める受講生は、スープに添えるクルトンの製造工程において、AIを利用して異常品を検出する技術を考案したという。また、音楽産業に勤める受講生は、音を数値化することで、ピアノの上達を支援するアプリを開発した。いずれも本業のビジネスに結び付くものだが、何より受講生にとっては、技術を組み合わせて新たな価値を創造する経験ができたことに、大きな手応えを感じたに違いない。

さらに特筆すべきは、「スマートエスイー」に参加することにより、人的なネットワークも得られることだ。「さまざまな専門性を持つ、異業種の人たちと一緒にグループ演習をしたり議論をしたりすることで、新たな気づきや発見が得られたという声も少なくありません。修了生同士の情報交換会や、実際にビジネスの場でコラボレーションするような事例も生まれています」。むろん、講師とのつながりも大きな財産になるだろう。

正規修了後の受講生には、大学院進学や共同研究への発展につながる情報が定期的に発信され、人的なネットワーク形成をさらに後押ししているという。

情報共有・交流のできるコンソーシアムを設立

「スマートエスイー」は毎年12月ごろに募集が開始される。20年度(第3期)はこの4月に講義が始まる。次期の募集開始まで時間があるが、それまでに同プログラムに触れる機会もある。

うれしいニュースとして、秋からは正規履修のライト版として「コース履修(3コース)」の実施を予定しているという。コースは「組込みIoTプロフェッショナル」「システムオブシステムズ・品質アーキテクト」「クラウド・ビジネスイノベーター」の3つで、いずれもLMS(ラーニング・マネジメント・システム)、オンデマンド学習、日本橋キャンパスでの実践などを組み合わせて行われる。定員は30人で、入学条件、受講料は検討中だ。

このほかにも、修了生はもとより、受講を検討している人も利用できるのが、「スマートエスイーコンソーシアム」だ。コンソーシアムは会員企業、連携大学との相互交流を通じてスマートエスイー人材の育成と活躍の場の拡大、産学や領域を超えた「共創」の場となることを目指すものだ。交流会、公開シンポジウム、セミナー、勉強会などが定期的に開催されており、入会は無料だ。

例えば、調査研究ワーキング活動では、「DX時代のビジネス戦略・要求調査研究」をテーマに、全8回のワークショップを開催中である。今後もコンソーシアム会員からのアイデアで、新しい活動を生み出していく予定だ。

またコンソーシアム会員に限定して、科目のスポット履修も受け入れている。

「『スマートエスイー』に関心をお持ちの方には、ぜひコンソーシアムにも参加いただきたい」と鷲崎氏が話すように、まずは会員登録し、気軽に参加したいところだ。

本事業は、文部科学省平成29年度「成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成(enPiT)」enPiT-Proの採択事業です。理工学術院総合研究所最先端ICT基盤研究所と情報理工・情報通信専攻が運営主体となり、データ科学総合研究教育センター事業の一環としても位置付けて進めています。

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