早稲田大学の社会人講座 スマートエスイー AI・IoT分野のイノベーション人材創出を
Society 5.0時代に求められる人材を育成
日本政府が「超スマート社会(Society 5.0)」というビジョンを掲げ、その実現に向けた取り組みを推進している。そのためには、それを担う人材が不可欠だが、ニーズの高まりにもかかわらず、その数は大きく不足しているのが現状だ。
スマートエスイー事業責任者の鷲崎弘宜氏は「AI、IoT、ビッグデータなどの最先端のICT技術を体系的に学べる場は少なく、とくに一度社会人になってしまうとその機会はさらに減ってしまいます。早稲田大学の『スマートエスイー』は、超スマート社会の時代を国際的にリードするイノベーティブ人材を育成する、社会人のための学び直しプログラムです」と話す。
「スマートエスイー」は2018年度から開講した。大きな特徴は早稲田大学を中心に13大学、21組織(会員企業5000社超)の大規模な産学連携ネットワークにより、実践的な社会人教育を提供しようとしていることだ。スマートエスイーは文部科学省平成29年度「成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成」enPiT-Proに採択された事業で、中間評価では最高ランクのS評価を得ている。
昨今では、IoTやセンサー、クラウドなどについて学べる社会人向け講座も増えている。これらと「スマートエスイー」との違いはどこにあるのか。
「個々の要素技術だけでなく、大切なのは、これらの技術を結び付けてビジネスを生み出すことです。『スマートエスイー』では、センサー、ネットワーク、クラウドなどの『通信・物理、情報処理領域』に加え、『アプリケーション領域』、さらには『ビジネス・サービス領域』までを貫く、総合実践的な講義を提供します」(鷲崎氏)。まさに、新たな価値創造を推進できる人材を育成しようとしているわけだ。
正規修了コースは4月~9月の半年間で19科目中10科目(120時間)以上の講義を選択して受けられる。この春からは第3期生のコースが始まる。受講料は55万円(税込み)、定員は30人だ。「これまで1、2期ともに定員を上回る応募があり、一部の志望者の方にはお断りをせざるをえませんでした。すでに第4期のお問い合わせもいただいています」と鷲崎氏は紹介する。
正規修了コースは履修証明プログラム・文部科学省職業実践力育成プログラム(BP)認定講座であり、その質の高さが人気の一因だ。また厚生労働省の専門実践教育訓練給付金の指定講座でもある。
技術とビジネスを結ぶ実践的な講義に特色
「スマートエスイー」が多くの社会人から支持されている理由はまず、その通いやすさだろう。講義が行われるのは、東京・中央区の「COREDO日本橋」にある早稲田大学の社会人教育拠点「WASEDA NEO(ワセダ・ネオ)早稲田大学日本橋キャンパス」だ。社会人に配慮して、講義は平日夜および土日に行われる。鷲崎氏は「ほとんどの受講生は働きながら参加しています。企業派遣の受講生と、個人受講生はほぼ半分ずつといったところです」と紹介する。
講義は原則として大学の講師と企業の講師がペアになって行われる。知識・理論にとどまらず、実際の現場で技術を活用するための実践的な活用方法を演習中心で学ぶという。