企業が「自然エネルギー」を無視すべきでないワケ(後編) 気候変動リスク回避、将来の先行投資として

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―証書はどこで買えるのですか。

石田 現在、日本には「グリーン電力証書」「J-クレジット」「非化石証書」という3種類の証書があります。グリーン電力証書とJ-クレジットは発行する事業者から買うことができます。ただし発行量が限られています。一方、非化石証書は発行量が多く、今後も増えていきます。企業が証書を活用するなら、これからは非化石証書が主流になるでしょう。

ただし非化石証書は一般の企業は直接買えません。購入できるのは小売電気事業者のみ。ですから、企業が非化石証書を活用したければ、小売電気事業者から非化石証書付きの電力メニューを購入する必要があります。そうしたメニューがない小売電気事業者に対しては、「非化石証書付きの電気を売ってほしい」と頼む形になります。

―コストが気になります。証書付きだと高くなるのでしょうか。

石田 非化石証書の価格は入札によって決まりますが、最低価格は1.3円/kWhです。その分のコストが上乗せになります。企業の電力契約は14~15円/kWhが相場ですから、安くても1割弱のコストアップです。

ただ、これをコストと捉えるか、先行投資と捉えるかでしょう。現在、欧米では気候変動に取り組まない企業には投資や融資をしないという動きが強まっています。対する企業側も資金調達が難しくなるのは困るということで、自然エネルギーの利用を増やしたり、サプライヤーにもそれを求めるなどの対応を始めています。

例えばある大手PCメーカーでは、5年ほど前からサプライヤーにCO2削減を要請しています。今のところ要請レベルですが、いずれ、「CO2ゼロじゃないと部品を買わない」というように厳しくなっていく可能性があります。欧米の先進的な企業は、そうした時代の流れを見据えて、自然エネルギーの利用を、コストではなく先行投資として捉えている。日本企業においても、このまま手をこまねいていると、5年後10年後、先行投資をしている企業とそうでない企業に圧倒的な差が開いてしまうはずです。

―そうした時代の潮流に気がついていない企業も多そうですね。

石田 関心はあるものの、情報がなくてわからないという企業は多いかもしれません。そこで2年前から、「自然エネルギーユーザー企業ネットワーク」、略称で「RE-Users」という活動を開始しました。 自然エネルギーの利用方法に関する情報共有を目的に、専門家を招いてセミナーや懇談会を開催しています。昨年の秋から東京以外の地域でも始めました。今年はさらに精力的に各地を回って、自然エネルギーの必要性を広く浸透させたいと考えています。

(右上)自然エネルギー財団が今年1月に開催した「RE-Usersサミット2020」(右下)サミットの他にも企業を対象にした情報交換会が活発に開かれている(左上)山形県で自治体と連携して開催したセミナー(左下)ヨーロッパの環境NGO「EKOenergy」のメルヴェ・ギュンギョル氏と(撮影:自然エネルギー財団)

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