企業が「自然エネルギー」を無視すべきでないワケ(後編) 気候変動リスク回避、将来の先行投資として
地球に住む一員として、限りある天然資源を守り、社会課題を解決し、誰一人置き去りにすることなく、持続的に成長していくこと。それは、公的な機関および民間企業、そして一個人に課せられた使命であり、互いの責任ある行動、消費、協調が欠かせません。
「SDGs経営」「自治体SDGs」を推進し、企業と地方公共団体の活動に変革を起こしていくために必要なことは何なのか。有識者からの提言、変革者の「実践知」をお届けし、皆様の企業活動を変革する一助となれば幸いです。第12回の今回は、前回に引き続き、自然エネルギー財団 シニアマネージャーの石田雅也氏に企業が知っておくべき自然エネルギーについてのお話をお聞きしています。
――前回、気候変動のために企業主導でできることがあるという話を伺いました。具体的にはどのような取り組みをすればいいのでしょうか。
石田 オフィスや工場、店舗で使う電力を自然エネルギーにシフトすることです。方法は、3つあります。1つ目は自家発電です。ポピュラーなのは太陽光でしょう。工場や店舗の屋根に太陽光パネルを設置して、そこで発電した電気を工場や店舗で使います。これは外部の誰にも依存せずに自社で可能です。
2つ目の方法が、電力会社、正確に言えば「小売電気事業者」からの調達です。多くの企業が自然エネルギーの電力を求めるようになったことで、自然エネルギー100%のメニューを販売する事業者が増えてきました。例えば水力発電100%のメニューなどがあります。
自然エネルギー100%のメニューを販売する電力会社の数は増加傾向にあります。企業は、電力会社にとって大事なお客様。顧客が自然エネルギーを求めれば、電力会社も自然エネルギーを増やさざるをえません。需要側から変わることで、電力会社も変わっていくことを期待しています。
そして3つ目が、証書の購入です。自然エネルギーの電力そのものではなく、それが生み出す環境価値を証書にして販売する方法なのですが、ちょっとわかりにくいかもしれません。
――証書の購入は、初めて聞く読者も多いかと思います。どのような仕組みでしょうか。
石田 家庭の太陽光パネルなら、利用するときにその電気が太陽光であることはわかります。しかし、発電所から送られてくる電気は、火力も太陽光も送電線の中で混じってしまいます。電気には色も匂いもないので、その中からCO2を出さなかった電気だけをより分けて使うことは不可能です。
そこで考え出されたのが、証書の仕組みです。発電所レベルでは自然エネルギーで発電したCO2ゼロの電気かどうかわかるので、自然エネルギーで発電した電力については、認証機関が認証して証書を発行。その証書を購入すれば、実際に使った電気がどのような発電方法によるものであっても、理屈の上では自然エネルギーの電気を使ったのと同じことになります。これは日本だけでなく、世界の大半の国で採用されている仕組みです。