現地法人をつくらずに海外で事業展開する方法 最短1週間で海外事業スタートを可能にするGEO
このモデルを使うことで、現地法人設立のための煩雑な手続きや初期投資といったコストを抑え、スピーディーに海外進出を行うことができる。また、サービスの利用期間を自由に設定できるため、例えば1年間と期限を区切ることにより失敗時の最大損失額を限定することも可能だ。いわば法人機能のサブスクリプション利用だ。
GEOを日本では初めて提供し始めたのが、矢頭氏率いるGoGlobalだ。18年に設立されたベンチャーながら、人材雇用の受け皿となる海外現地法人を15拠点持ち、そのほか150カ国で提携ネットワークを有する。
「すでに利用企業は50社を超え、新規市場進出や開発拠点の設置などを支援してきました。利用企業が海外で雇う人材候補がいる場合、最短1週間で事業を開始できます」(矢頭氏)
メリットは機動力の高さだけではない。現地法人をつくると年次決算や給与計算などの管理業務が必要になるが、GEOだと不要。マーケティングや市場開拓などのコア業務に集中することができる。

「GEOは社員5人くらいまでのスモールスタートに向いています。やってみて成功できそうなら、現地法人をつくってもいい。失敗したとしても、現地法人の設立・撤退のコストがかからないので最小限の損失で済みます。大きなリスクを背負う必要がなくなるため、安心してトライできるのです」(矢頭氏)
「腰が重い」上場企業の活用法
もっともベーシックな活用例は、現地で人材を見つけてまずGEOでスタートするパターンだが、事業開発担当の渡辺さち氏によるとほかにもさまざまな活用例があるという。

事業開発ディレクター
渡辺 さち
「すでに商社・代理店経由で製品を輸出している場合に、現地での代理店管理・販売力を強化するために人員を配置したり、ベトナム人技能実習生の帰国時にベトナム事業のトライアル進出を任せたりするお客様がいらっしゃいました」
これまで中堅・中小企業のケースを中心に紹介してきたが、GEOを活用した海外進出は上場企業にとっても魅力的だ。
「上場企業の現地法人設立は、役員会で決裁をもらわなくてはならず、中小企業が進出するとき以上に時間がかかる。ただ、GEOなら事業部長の決裁範囲内であることがほとんど。逆にGEOでトライアルをして実績をつくってから役員会に稟議をあげたほうが、ゴーサインをもらいやすいでしょう」(渡辺氏)
最後に矢頭氏は、海外進出に迷う経営者にエールを送る。「日本企業の製品・サービスの品質は高いレベルにあります。これにスピード感のある海外事業展開を組み合わせれば、日本企業は海外で大きく成長できます。『やってみようかな』と思ったときにお客様が動けるように、私たちがその環境をつくっていきたいです」。
「まじめさ」に定評のある日本企業。しかし、まじめすぎるがゆえに新たな領域にチャレンジできないのはもったいない。海外への小さな一歩を踏み出すことで、企業の未来は大きく変わる可能性を秘めている。
