企業がサステナブルな存在であるために(後編) 自治体と企業、学生のマッチングで見える未来
――SB国際会議は次世代育成の取り組みにも力を入れていると聞きました。
鈴木 はい。一例として、ご協賛いただいている大和ハウス工業は、大学生を無料招待し、会議内でワークショップを行うプログラムを実施します。ほかには、日本旅行提供の高校生を無料招待するプログラムもあります。
企業がこれらの取り組みに力を入れるのは、次世代を担う高校生や大学生にSDGsを学ぶ機会を提供したいという気持ちとともに、彼らを未来のステークホルダーと考えているからなのです。数年後、若い皆さんは一緒に働く仲間になるかもしれないし、お客さんになるかもしれません。そこで、企業はこの場所を若い⼈たちにしっかり学んでもらう場所であり、若い人たちへのマーケティングの機会であると捉え、試行錯誤して行動しています。
大学生の優待プログラムは通常より手頃な価格に設定しているのですが、それでも学生には負担が大きいという声がSNSで上がってきました。そこでボランティアスタッフとして働くことでプログラムに無料で参加できるというものも用意しました。募集枠はすぐに埋まってしまうほどの人気ですよ。
――2月の横浜が今から楽しみですね。最後に、サステナブルなブランドづくりに悩んでいる企業や自治体にアドバイスをお願いします。
鈴木 サステナブルなブランドになるためのキーワードは4つあります。まずは「パーパス(存在意義)」。自社は何のためにあるのかということは、つねに企業が意識しなければいけませんね。そして、サステナビリティを実現するための「サイエンス&テクノロジー」。さらに他社とコラボレーションすることで、可能性を広げる「協働と共創」、ユーザーの共感を呼ぶための「ストーリーテリング」も欠かせません。
どれも重要ですが、SB国際会議に絡めて言うと、とくに「協働と共創」は強調しておきたいところです。やはり1社単独でできることには限りがあります。社会を大きく変革しようと思うなら、共通の課題について業種業態の垣根を越えて一緒に取り組む「コレクティブインパクト」が必要でしょう。前段でご紹介した「#Brands For Good」は、まさにその典型例です。
欧米では、トップの一存で企業間のコラボレーションが始まることは珍しくありません。ただ、同じことを日本企業がやるのは難しいところもあります。むしろ、SB国際会議のような場を利用してネットワーキングをして、ボトムから動きをつくっていくというやり方のほうが日本に合っているかもしれません。ぜひこのような場を最大限に活用していただきたいですね。
【場所】パシフィコ横浜
本文で採り上げられている、サステナブル・ブランド国際会議は、今年は横浜で開催予定だ。また、同時開催される第2回未来まちづくりフォーラムでは「日本創生SDGsモデルをつくろう」と銘打ち、SDGsに基づいた持続可能なまちづくりや、新たな連携・協業を生むマッチングの機会が提供される。
ステージでは、エプソン販売の紙再生機「PaperLab」を導入した岩手県一関市の勝部修市長と、コンサルタント見山謙一郎氏の対談が実施されるなど見どころも多い。展示では、実機が稼働している様子も見ることができる。
イベントはどちらも事前登録制で、席数が限られるので、詳しくはサイトを参照のこと。
サステナブル・ブランド国際会議開催概要はここから