ネットワークインフラの
早期復旧がカギ
大規模な災害が発生した際、電話が通じにくくなる……。こうした現象が起きるのは、大きく分けて二つの要因が考えられる。一つは、通信の集中による輻輳(ふくそう)だ。「回線がパンクする」などと言われる状況である。多くの人が安否確認や情報を求めて一斉に電話をかけるため、電話が通じにくい状況が生じるのだ。災害に限らず、人気アーティストのチケット販売時など、電話が集中的にかけられた際なども、輻輳が起きる可能性がある。もう一つの要因は、通信ケーブルや基地局などの物理的な破損。設備の倒壊や水没、ケーブルや管路の断裂、電柱の倒壊など、情報通信のインフラそのものが大きな被害を受けることによって電話が通じなくなる。
災害時などでは、たとえば安否確認の重要性があらためてクローズアップされることが多いが、実際に情報通信のネットワークという社会のライフラインともいえる重要な機能がダウンしたままといった事態が長期化すると、地域そのものの復旧にも影響を与えかねない。
ケーブルテレビ(CATV)も、ライフラインとしての情報通信インフラという文脈で、その重要性を理解することができる。CATV局は通常のテレビ番組以外に、コミュニティチャンネルを設けて地域独自の情報を提供しているプログラムも少なくない。地域に密着した取り組みによって、文字どおりコミュニティの中で大きな存在感を誇り、地域住民から信頼を得ているケースもあるようだ。
一方で、テレビ放送だけでなくインターネットのインフラも提供しているCATV局も多い。それだけにCATVの機能停止は地域住民・社会に深刻な影響を与えかねない。大規模な災害時など、早期な復旧が求められるのは、通信インフラ同様にCATVも例外ではない。
災害大国といわれる日本では、その備えは大きな意味を持つ。実際、マグニチュード6以上の地震の発生回数は日本が全世界の2割ほどを占める、というデータもあるほどだ。地震のほかにも、台風や集中豪雨などもしばしば発生している。温暖化の影響もあるのか、最近はゲリラ豪雨による水害も増えている。大規模な災害の被害想定などが発表される中、BCPに対する意識もより一層高まっていくのではないだろうか。
情報通信ネットワークの
耐災害性強化へ
政府も動き出している。2011年度に「情報通信ネットワークの耐災害性強化のための研究開発」を行うことを決定。災害時の携帯電話などの通信の輻輳を軽減する技術(つながるネットワーク)や、通信・放送インフラが地震や津波などで損壊したときも、自律的にネットワークを構成し通信・放送を確保する技術(壊れないネットワーク)の研究開発が目的だ。いわば、情報通信産業のBCPを実現するための技術の研究ともいえる。
政府の決定を受け、総務省は11年12月、研究課題についての提案を公募した。このとき設定された研究課題は、①大規模災害時における移動通信ネットワーク動的通信制御技術、②大規模災害時における通信ネットワークに適用可能なリソースユニット構築・再構成技術、③大規模災害においても通信を確保する耐災害ネットワーク管理制御技術、④災害に強いネットワークを実現するための技術、⑤災害時に簡易な操作で設置が可能な小型地球局(VSAT)、⑥災害情報を迅速に伝達するための放送・通信連携基盤技術、⑦災害情報を高圧縮・低遅延で伝送する技術、⑧災害時におけるケーブルテレビ応急復旧システム(可搬型緊急用ヘッドエンド設備)、⑨災害時におけるケーブルテレビ応急復旧システム(幹線応急復旧用無線伝送装置)、⑩多様な通信・放送手段を連携させた多層的な災害情報伝達システム、という10テーマ。大学や企業、研究機関などが応募し、それぞれのテーマについての提案が採択され、実際に研究開発・実証実験を行う委託先が決定した。複数の企業や大学などが共同で応募し、委託先になったケースも多い。現在は、研究開発成果の展開に向け、受託者だけでなく、総務省や情報通信研究機構等が設立した「耐災害ICT研究開発協議会」などによる取り組みが各地で精力的に進められている。
この中の、「災害時におけるケーブルテレビ応急復旧システム」の研究開発を受託した京セラコミュニケーションシステム・エンジニアリング営業本部の菅佐原幸夫ワイヤレス営業部長は、こう語る。
「多くの企業がBCPへの取り組みを進めている中、情報通信産業のBCPではネットワークを二重化して万が一のときにも情報提供を継続できるようにする取り組みが増えています。CATVにしてもインターネットにしても、災害が発生したときこそ切実に情報を求められるのですから、仮に被災してもすぐに復旧できるような態勢を整えておくことが求められている証左とも言えるでしょう」。
ネットワークの切断を防ぐ。万が一ダウンした場合には早期に復旧させる……。さまざまなセクターが連携することによってテクノロジーなどが進化を果たし、情報通信産業のBCPに寄与している潮流に、これからも注目だ。