DX時代に、教育現場が抱くべき危機感 デジタルネイティブな学生にどう対応するか

拡大
縮小

ポストデジタル時代に存在感を発揮する大学の条件

―― 一橋ICSでも、ポストデジタル時代に対応した新しい取り組みを進めているそうですね。

藤川 一橋ICSでは「GVT」という取り組みを進めています。当校はもともと、すべて英語のプログラムで、外国人学生の割合が80%、世界各地のトップビジネススクール30校とのグローバルネットワークなどに特長があります。「GVT」は「Global Virtual Team」の略です。開講初年度には、カナダのバンクーバーで学ぶ提携校の学生たちと一緒に、インドのバンガロールに拠点をおく企業をクライアントとするプロジェクトを進めるという形式をとりました。今年度の「GVT」は、一橋ICSを含む海外提携校11校の学生によって編成される複数のチームがマルチパーティー型ネゴシエーションに取り組みます。いずれも、対面では一度も会ったことのない学生たちが、まさにグローバルな混成チームで、バーチャルにコミュニケーションを図りながらプロジェクトを推進するという学習体験を得ることができます。

―― 先進的なテクノロジーを活用することにより、教育現場ではどういった変化が起きていくのでしょうか。

藤川 従来、海外の提携校の学生とのコミュニケーションにはメールやSNS、ビジネスチャットツールなど多様な方法を用いていました。現在は「Microsoft Teams」に、テキストだけでなく画像データなども集約しています。これにより、例えば、プレゼンテーションやネゴシエーションの講義において、発表者の顔の表情などをAI(人工知能)で分析してスコア化するといった実験も始めています。

―― 少子化傾向により、日本国内では大学の生き残りが重要なテーマになりつつあります。ポストデジタル時代に求められる大学の条件とは何でしょうか。

藤川 大規模公開オンライン講座(MOOC)に代表されるように、インターネットの発達により、海外の有名大学の講義が日本にいながらにして受けられるようになっています。

これとは別に、一橋ICSでは海外の提携校とともに、入学予定者に対する共通のプレプログラムなどの開発にも着手しました。今後はさらに、受験を希望する人が誰でも受けられるプログラムなども開発したいと考えています。

近い将来、デジタルによって可能となるバーチャル環境を通じた学習体験と、リアルのキャンパスや教室における学習体験を統合したカリキュラムを通じて、地球規模の経営環境において活躍できるような人材が、どこでも育てられるようになります。そうなったときに、各大学は、それぞれの場所だからこそ何ができるのかを研ぎ澄ます必要があるでしょうし、それができる大学は、国内はもとより世界でも存在感を発揮できると思います。

関連ページ
⽇本マイクロソフト
DXによってもたらされる⼤学教育現場の可能性