DXによってもたらされる大学教育現場の可能性 クラウドやAIの利活用が成功のカギ
ビジネス環境の変化に伴い求められるスキルも大きく変わる
「大学などの教育の現場でも、DX(デジタルトランスフォーメーション)というキーワードを聞く機会が増えています」と語るのは日本マイクロソフト パブリックセクター事業本部 業務執行役員の中井陽子氏だ。中井氏は日本マイクロソフトのパブリックセクターにおいて文教市場のビジネス全般を統括している。
「これに合わせるように、大学の教育機関でクラウド化が加速しています。2017年度と比較すると、2019年度の大学教育機関におけるクラウド採用率は3倍以上になっています。最近では大学だけでなく、小学校・中学校・高等学校でもクラウドの採用率が年々拡大しています」
クラウドにはコストの削減だけでなく、拡張性やセキュリティー面でもメリットがあるが、採用の理由はそれだけではないようだ。
「日本の学校の先生方は部活の指導や引率など、本来の業務以外でやらなければならないことが少なくありません。いわゆるコア業務以外の業務負担をできるだけ軽減するためにもクラウドの活用は有効です」
ビジネス環境の変化に伴い、人材に求められるスキルも大きく変わりつつある。
「AI(人工知能)や、あらゆるものがインターネットにつながるIoT、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などのテクノロジーが進化するほど、『人間は何をすべきか』が問われることになります。未来を担う人材を育てる教育機関の役割がますます重要になります」
18歳人口の減少に歯止めがかからない中、いま教育機関に求められているのは「生き残り戦略」や「差別化」、そしてそのための「DX」なのだ。
これからの教育機関に求められる「フレームワーク」を発表
一口で教育機関のDXと言っても、何から手をつけて何を目指すべきか悩むところだろう。
「私たちはこれまでも長年にわたり教育機関を対象にITソリューションを提供してきました。その取り組みを基に、『Microsoft Education Transformation Framework』を発表しています。これは教育機関が今後どのような方向に進むべきか、そしてそのような人材育成のためにどのような変革をすべきかといった、文字どおりの『枠組み(フレームワーク)』を提案するものです」(中井氏)
特筆すべきは、このフレームワークは日本マイクロソフト独自のものではなく、グローバルのマイクロソフト共通のものであるという点だ。つまり、世界でこれからどのような人材が求められるのか、そのためにどのような教育・学びの環境が必要なのかを考察し、求められる取り組みが網羅されているのである。
中井氏によれば、「Microsoft Education Transformation Framework」は、「リーダーシップとポリシー」「最新の授業と学習方法」「知的環境」「テクノロジーの青写真」の4つで構成されており、それぞれ、さらに4つのトピックスに細分化されている。例えば、「知的環境」を整備するためには、「アクセシブルな学習スペース」「校内デバイス管理」「持続可能・実行可能な設計」「統合されたスマートセキュリティー」を用意していく必要がある。
「これからの時代、自分のやりたいことを実現するには、デジタルを駆使して人とつながり、巻き込んでいくスキルが不可欠になります。そのためには、大学から適切なデジタル環境に慣れていなければなりません。『Student Success』という言葉もありますが、学生の将来まできちんとサポートできる大学のインフラとはどういうものなのかを一緒に考えさせていただきます」(中井氏)