グローバル経営支援セミナー ラオス編 新興メコンの成長エンジン ラオス経済の現状と最新動向
講演Ⅱ
「ラオス経済の現状と展望」
三菱東京UFJ銀行の服田俊也氏はラオス経済の現状、魅力、課題について解説。本州とほぼ同じ約23万平方キロのラオスは、長く続いた内戦の影響でインフラ整備が遅れてきたが、近年は高成長を続けている。最大貿易相手国のタイとは「歴史的経緯からアンビバレントな国民感情の一方で、安定した外交関係を維持している」と述べた。
ラオス投資はタイとの補完関係で考えることもできる。服田氏は「メコン川を挟んで隣接するタイ側のインフラが利用でき、同一言語に属するタイ語も通じる。タイ人幹部による現地法人の管理、ラオス人社員のタイでの研修も可能」と語る。また、若い人口構成、安価な人件費、豊富な水力資源による電力もある。税制面などの優遇措置も他国に遜色なく、後発開発途上国(LDC)特恵関税も利用できる。東西・南北の経済回廊整備でインドシナ域内へのアクセスが向上しつつあり、ビエンチャン日本人商工会の会員数(準会員含む)は11年末の39社から13年末には60社に増加。業種も縫製業中心から多様化し、賃金差を生かしたタイ・プラス・ワンの動きも出てきた。
ラオスは人口約664万で、日系企業からは幹部候補人材・ワーカーの採用難などの課題も指摘されているが、タイなどへ流出している大量の出稼ぎ労働人口がある。同行はラオス国内にもネットワークを持つタイのアユタヤ銀行を買収済みだ。服田氏は「ラオスは世界遺産のワットプーなど観光資源もあり、ビエンチャンでは治安の良さを感じる。日系企業支援を充実させたい」と語った。
講演Ⅲ
「タイを拠点とした域内事業展開:
AECのなかでの地域補完型工業化」
1990年に日本大使館経済専門官として赴任以来、ラオスに関わってきた鈴木基義氏(現ラオス計画投資省JICA専門家)は「特にこの3年程の間、ラオスは驚くべき変化を遂げてきた。近隣国のタイに比べれば遅れているが、発展の速さには注目すべき」と、ラオスの可能性を訴えた。
日本からラオスへの民間投資は昨年、前年比15倍に急増。農薬汚染されていない農地を生かした生薬や小豆栽培、縫製業などに加え、昨年はニコンがサワン・セノ経済特別区に一眼レフカメラの一部工程をタイから移管し、製造業進出も加速している。ラオスの「地域補完型工業化」を考える鈴木氏は「産業集積が進んだタイや中国に対し、国内調達で不利なラオス、ミャンマー、カンボジアは労働集約的工程を担う第二工場立地を図る」と語る。一人当たり月労務費は、タイで437ドル、ラオスで102ドルと、335ドルの差があり「バンコク港~ビエンチャン間の40フィートコンテナ運送コスト(片荷往復)3430ドルは、10人の労働者をタイで減らし、ラオスで雇えばカバーできる」(鈴木氏)と試算。工場の国際分散立地が大きなコスト削減につながる可能性を示した。
ラオスの人口は確かに少ないが、労働力には余裕がある。昨年の外国企業の進出ペースでも年間の労働人口純増約7万人の半分も吸収できていない。また、タイに隣接するサワナケート県の労働人口の約半数27万人は出稼ぎ労働に従事している。非常に欠陥率の低い作業ができるというラオス人の強みを知る鈴木氏は「この現状を何とかしたい」と、日系企業進出に期待した。