「日本」総キャッシュレス化の行方 消費者還元事業が起爆剤に

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

―なかなか顧客のライフイベントや嗜好まで把握できないわけですね。

宮居 映画が好き、カラオケが好きといったアンケートの回答を得ることはできても、本当に映画やカラオケに行っているのかといったデータは業態が違うと取れません。毎月映画館に行っている人と、単に映画が好きと言っている人、どちらにクーポンを発行すれば効果が出るかは明らかです。POSデータだけでは、なかなか消費者のライフスタイルはつかめません。

欧米ではこの課題を解決するものとして、CLO(Card Linked Offer)と呼ぶ、クレジットカードなどの利用履歴から顧客の消費動向を把握し、ターゲティング別にクーポンなどの特典を配信して加盟店に送客するサービスが普及済です。

―マスマーケティングではなく、ONE to ONEの、まさに消費者一人ひとりへのマーケティングが重要になってくるといえそうですが、1企業や1店舗だけでそれを実現するのは難しそうです。

宮居 1企業や1店舗と消費者との接点は小さくても、たくさんの企業や店舗が集まることによって、ライフスタイルや消費の傾向を見いだすことができるようになります。今後は日本でも、CLOのような取り組みが進んでくると考えられます。

―複数の企業が集まってターゲティングや特典の提供を行うとなると、個人情報の保護はどうなるのでしょうか。

宮居 もちろん、個人情報保護やプライバシーへの配慮は必須です。消費者が望まない情報の活用は行ってはなりません。同意を得た範囲で情報の共有が行われることになります。ただ、同意を得るためには、消費者にとって「この店舗であれば情報を提供していい、対価の特典が欲しい」といった魅力ある企業や店舗が集まることも重要です。

―決済情報などのビッグデータをマーケティングに生かしたいと考える企業が増えています。成功のポイントは。

宮居 キャッシュレス決済を導入したり、データを集めたりするだけで何か傾向が見出せるものではありません。集めたデータを基に仮説を立て、検証するといった取り組みが不可欠です。あくまでも、データ収集は目的ではなく、手段なのです。

自社や自店が、地域や業態の中でどのような姿を目指すのか、そのためにどのような情報が必要で、どう集めるのか。方向性が定まれば、決済データを使ってやれることはたくさんあります。ぜひ挑戦し、自社・自店の成長を実現してほしいと願っています。