有料会員登録 東洋経済オンラインとは

subscribed TOKYO 2019 GOODBYE,OWNERSHIP. HELLO,USERSHIP.

AD
  • セミナーレポート 制作:東洋経済ブランドスタジオ
所有から利用へ――デジタル時代の消費の流れが本格化してきた。これを受けて、日本の製造業でも、サブスクリプションビジネスの動きが加速。売り切り型の製品販売ビジネスモデルは大きな変革の時期を迎えようとしている。2019年、4回目を迎えた「subscribed TOKYO」は、新たなビジネスモデルの主流に躍り出ようとしているサブスクリプションの特徴、従来型モデルとの違いを解説し、その本質に迫った。また、サブスクリプション導入支援を行うコンサルタントの知見、導入を進めている先進企業の事例も紹介された。
共催:Zuora Japan 東洋経済新報社
プラチナスポンサー:デロイト トーマツ コンサルティング
ゴールドスポンサー:GMOペイメントゲートウェイ Worldpay
シルバースポンサー:SBペイメントサービス

オープニングスピーチ

Zuora Japan
代表取締役社長
桑野 順一郎氏

サブスクリプション・マネジメント・プラットフォームを提供するZuoraの桑野順一郎氏は、最初に400以上の商材リストを示して「これらは、ここ数年でサブスクリプションが始まったものの一部。製造、金融、不動産などさまざまな分野に急速に広がっている」と述べた。最近では、自動車乗り換えや、自販機からの飲料購入、ボス人材入れ替え放題などの月額定額サービスも登場。「今回は製造業からの参加者が目立つのが特徴。サブスクリプションを理解し、ビジネスに役立てていただければ」とあいさつした。

基調講演
The End of Ownership
and the Rise of Usership
in the Subscription Economy.

Zuora Inc.
CEO
ティエン・ツォ氏

Zuoraのティエン・ツォ氏は、住まいの片付けといったコンテンツが米国でも注目されている背景には「モノの所有を減らしたい」というニーズがあると指摘した。同社が世論調査会社に依頼して行った世界の人々の意識調査では、57%がモノを減らすことを望んでいることを紹介。「トレンドはオーナーシップの終焉に向かっている。所有に替わるのは、ユーザーシップだ」と述べ、サブスクリプションビジネスは今後、急拡大するとの見方を示した。

すでに自動車では、所有の終焉と利用の拡大の傾向が見られる。世界的に販売台数が減少するのに対し、走行距離は増加していて、従来の販売台数ベースの売り上げ増は難しいが、走行距離ベースにビジネスを転換すれば、持続可能な売り上げ増が見込めることを示す。メーカー間でもサブスクリプションが広がるが、定額制でモノを提供するだけではサブスクリプションビジネスはできない。重要なのは、モノがサービスに変わることで、製品を“永遠のベータ版”として継続的に改善したり、ダウンロード可能なアプリケーションによって機能を追加することが可能になることだ。そうして新たに提供する価値を成長につなげられるようになる。

販売数量を追求する従来モデルは、販売チャネルを増やすことに注力してきた。しかし、サブスクリプションでは、利用状況などの顧客データを収集し、長期的な関係を構築。1人当たりの売り上げを増やし、解約を減らすなど、顧客中心のマーケティング施策がポイントになる。また、既存契約から予測可能な利益をマーケティングに投資して、持続的成長が可能になる。そして「過去の実績だった損益計算書は、未来を語るものになり、財務部門の役割も変わる」とコメント。

顧客の反応を見て、価格設定など最適な施策を探っていくサブスクリプションビジネスでは、管理システムのアジリティ(俊敏性)も重要だ。自社IT部門の対応を待っていてはチャンスを逃すおそれもある。「われわれのプラットフォームを利用すれば、アジリティを担保できる」と述べたティエン・ツォ氏は、サブスクリプションへの転換時に短期的に売り上げが減少する問題があっても、消費者がモノを買わない時代の収益源を確保する必要があるとして「オーナーシップにさよならを告げ、サブスクリプションへの変革を」と訴えた。

特別講演:Japan Customer Story I
デジタルビジネス創出に向けた成長戦略「リコー挑戦」

リコー
常務執行役員
プラットフォーム事業本部長
野水 泰之氏

リコーの野水泰之氏は、ペーパーレス化で複合機のリース・保守事業が厳しさを増す中で、進めているサブスクリプションへの取り組みについて語った。同社は、オフィスに集まって働いている人をITでつなぎ、時間や場所に縛られない将来の働き方を支える「デジタルワークプレイス」の強化を目指し、モノ売りからモノ+コト売りへのシフトを成長戦略に掲げている。そこで、商品中心から、働く人を中心の考えに移行するため、パートナーとともに、顧客に価値提供するプラットフォーム「リコー・スマート・インテグレーション」を創設した。まずは、そこでドキュメント・ワークフロー・サービスなどを提供して、デバイスライセンスに替わり、今後はユーザーIDが重要になると訴え、セールス担当の意識を改革。経営トップには「瞬時に世界中で何が売れているかわかるようになる」とデータを定期レポートすることで、サブスクリプション移行への理解を求めてきた。見えてきた課題として、アップセルに必要な「永遠のベータ版」の商品ラインナップ、コストを抑えるデジタルマーケティング導入を挙げた野水氏は、ユーザー中心の課金モデルを構築するという課題は、Zuoraで準備が整ったと説明。「私たちのプラットフォームに参加してもらえれば、クロスセルで互いのビジネスを拡大できる。日本の製造業の強さを取り戻すために結集を」と会場に呼びかけた。

Digital Transformation
サスティナブルなサブスクリプションビジネス実現に向けて

デロイトトーマツコンサルティング
執行役員
Systems & Cloud Engineering Unit Leader
根岸 弘光氏

デロイトトーマツコンサルティングの根岸弘光氏は、サブスクリプションのメリットとして、顧客の初期投資額を下げて購入障壁を除外することに加え、顧客の好む新サービスを提供し続けられることなどを指摘。持続可能なサブスクリプションには「顧客にカスタマイズできるサービスを継続的に提供しなければならない」と語り、素早くアプリケーションを作れるアジリティを持った開発プラットフォームと体制整備を訴えた。

アジリティの高い開発プラットフォームには、自動化可能な作業は自動化し、人は付加価値を生む作業に集中することで、素早い開発ができる環境が必要。また、IoTからのビッグデータだけでなく、基幹系システムなどに入っている既存の社内データから必要な情報を抽出、活用できなくてはならない。API連携を通じて、他社が持つ有用なサービス、情報を利用できるようにすることも求められる。そのための基盤として、サービスそのものを提供する基盤、顧客の嗜好を把握する利用状況分析基盤、Zuoraが提供している契約管理基盤、社内データが入った基幹系システムやSaaSとの連携基盤、他社サービスとのAPI連携基盤、迅速にアプリケーションを作れる開発基盤―の整備が重要だと訴えた。

また、IT部門についても、エラーなく基幹系システムを支えることに注力してきた従来のIT部門と異なり、サブスクリプションではアジリティへの高い意識が求められる。「まずやってみる」と言えるIT人材の育成・確保、新たな開発ルールやプロセス整備の必要性を求めた根岸氏は「チャレンジしてサービスを創出できるIT部門にならなければ、サブスクリプションビジネスは実現できない」と変化を促した。

Japan Customer Story II
B to Cビジネス

Digitize or Die、
破壊的イノベーションの時代のマーケティング戦略

富士フイルム
e戦略推進室長
板橋 祐一氏

富士フイルムの板橋祐一氏は、デジタル化により、写真の主なマネタイズが、フィルム、現像、プリントから、写真をシェアするSNSで広告による収入を得るなど、思いもよらないビジネスモデルが生まれたとして「イノベーションの本質は、技術が置き換わることではなく、ビジネスモデルが変わることにある。それは、新たなビジネスチャンスにもなる」と指摘した。顧客にフィルムという消耗品を繰り返し購入してもらうリカーリング・ビジネスで成長した同社は、顧客に繰り返し利用してもらえる新たな写真ビジネスとして、家族写真アルバムの作成「かぞくのきろく」や写真のクラウド保存「PhotoBank」のサブスクリプションサービスを開始。サブスクリプションによって「より深く顧客を理解し、より喜んでもらえるフォトライフを提供したい」と述べた。Zuoraを選んだ理由については、事業環境もビジネスモデルも変化が激しい中で「共に成長していけるパートナーであることが大事と考えている」と説明した。

Japan Customer Story II
B to Bビジネス

サブスクビジネス
円滑な展開へのヒント

ソフトバンク
テクノロジーユニット IT本部
戦略事業システム企画課 課長
大川 啓一氏

ソフトバンクの大川啓一氏は「サブスクリプションビジネスの拡大は世界的潮流」として、同社もAIやロボットなど多彩な領域の戦略事業をサブスクリプションビジネスによって推進していることを説明した。ただ、多品種少量型の事業展開は、通信などのコア商材の課金基盤で扱うのに適さず、既存のシステム担当からのサポートも受けられないため、事業スピードの低下、売り上げの伸び悩みなどの課題に直面した。その打開策として、標準機能でマネタイズの設計、契約、回収、売り上げ管理まで対応できるZuoraのサブスクリプション管理基盤を導入し、戦略事業のITを包括的に支援する専門組織を立ち上げた。その過程で得た教訓として、サブスクリプション管理は早期に柔軟な基盤システムを導入する、適当なサービスを見つけてスモールスタートする、サービスの仕様は熟慮のうえ、関係者の意思統一をしてプロセスを前進させる、手間のかかる既存サービスのデータ移行は避ける――ことなどを勧めた。

Japan Customer Story II
B to Bビジネス

5万社が導入する「クラウドサイン」のフリーミアム設計とプライシング戦略の歴史

弁護士ドットコム
取締役
クラウドサイン事業部長
橘 大地氏

弁護士ドットコムの橘大地氏は、同社がサブスクリプションで提供するクラウド型電子契約サービス「クラウドサイン」の価格戦略について説明した。日本に根強く残る、紙とハンコによる契約は、締結に多大な手間がかかる。2015年にリリースしたクラウドサインは、普及のために、当初は月30件上限のフリーと、月額1万円・1件50円で件数上限のないスタンダードの2プランを用意。徐々にフリーの上限件数を減らす一方、外国語対応などの機能を追加してスタンダードの新規顧客に対しては1件ごとの費用を引き上げてきた。Zuoraは請求書作成から送信までを自動化。価格設定変更に伴う解約率などの影響も即座にわかることで、迅速な経営判断を支えた。2019年12月現在でさらにユーザー数も増加し、日本を代表する企業を含む約6万社が利用するサービスとなり「Zuoraが世界中のサブスクリプションビジネスの課題を解決する中で培った成長モデルに従うことで、われわれも成長できた」と語った。

KPIセッション
サブスクリプションビジネスをドライブするための管理会計とKPI

Zuora Japan
セールスコンサルティングディレクター
竹内 尚志氏

Zuoraの竹内尚志氏は「サブスクリプションは、従来の製品販売ビジネスとは異なる管理会計を適用すべき」として「期初のARR-チャーン+新規成長ARR=翌期の期初ARR」で表されるサブスクリプション会計管理の基本を説明した。期初のARRは、既存契約から得られる1年分の売り上げ。そこから、ダウンセルなどの差分も含めた解約分のチャーンを差し引き、その年の新規契約から得られる売り上げ増加分を加えた数字が、翌期の期初ARRになる。この翌期のARRを増やすことで、サブスクリプションビジネスは成長する。Zuoraが考案したサブスクリプションの損益計算書では、期初ARRから、チャーンのほかに売上原価、一般管理費、研究開発費で構成される定期コストを引いた定期利益を算出。この定期利益をどれくらい、成長コストの販売・マーケティング費用に投資するか、が経営判断のカギになる。そこで注目する指標が、獲得する新規成長ARRに対して、どれくらいの成長コストがかかるかを示すGEI(=成長コスト÷新規成長ARR)。高効率のマーケティング手法を採用するなどして、GEIを1以下にすれば、成長コスト以上のARR増加を見込むことができるようになる。サブスクリプションビジネスでは、チャーン、定期コスト、GEIの3指標をコントロールして成長コストに投資することで「将来の成功を確信できる」と語った。