自治体が「いいね!」で探る地方活性の一手 神戸、秋田、岩手…とある商店街の成功事例
神戸の商店街が、成功事例の第1号に
コミュニティーやテクノロジーの力を活用して、地方自治体や企業が抱えるさまざまな課題を新たな機会へと変える支援をしたい。そうした考えから、フェイスブック ジャパン(以下、Facebook)は全国各地の自治体と事業連携協定を締結し、具体的なサポートに取り組んでいる。
その最初の例が、2018年7月に同社との協定締結に至った神戸市だ。「同年9月にキックオフイベントとして、神戸市職員や中小企業、NPOなどに向けたFacebook/Instagram活用セミナーを開催しました。約400名が参加し、大きな手応えがありましたね」。そう振り返るのは、同市の長井伸晃氏だ。
連携協定締結の背景には、市政情報発信に対する強い問題意識があったという。「以前の神戸市では、SNSアカウントが乱立しており、統一感がなかった。まったく発信が行われていない、いわゆる放置アカウントもあり、何とかしなければならないという状態でした」(長井氏)。
そこで神戸市はFacebookとの連携協定を締結。「市政情報発信支援プログラム」、「地域経済活性化促進プログラム」、「コミュニティ活性化促進プログラム」の3分野で協業することを決めた。また協定締結後、Facebookからの助言を受け、運用基準とエンゲージメント向上のコツをまとめたガイドラインを作成。より効果的な市政情報発信の第一歩を踏み出した。
中でも地域経済活性化の成功事例には、市内の商店街が挙げられるという。「須磨区板宿にある商店街から、マルシェイベントの集客にFacebookを活用したいとの希望を受け、Facebookと当市がバックアップしたんです。イベント当日はあいにく雨天でしたが例年と同水準の客数があり、かつ多数の新規客が来訪する効果がありました」(長井氏)。
この事例は単に、商店街の集客力向上に寄与したというだけのものではない。神戸市では、こうした新しい施策に対する商店街全体の理解を深め、施策の定着を重視するなど、長期的な視点で取り組んでいる。さらにほかの商店街に対するロールモデル化となるべく、腰を据えて推進しているのだと長井氏は語る。「今後は、こうした成功事例を蓄積していきたい。そしてノウハウをほかの商店街に連携するなど、商店街同士のつながりを強化したいと考えています」。
そして今年、Facebookは秋田県の4市(横手市・湯沢市・大仙市・仙北市)および岩手県盛岡市と事業連携協定を締結した。秋田県における施策として、10月に秋田県内で「自治体職員向けセミナー」「初心者・シニア向けセミナー」が開かれた。
自治体職員向けセミナーに登壇した、同社の田野崎亮太氏は力強く語る。「Facebookのミッションは『コミュニティーづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する』こと。そして、人と人をつなげる重要な1要素が地方自治体です。地方自治体にFacebookやInstagramといったサービスを活用してもらうことで、地方にもっと活力をもたらしたいと考えています」。
同セミナーでは、情報発信において重視すべき指標と、それを高めるためのクリエーティブの作り方、読まれる記事の傾向、安全な運用方法と炎上対策、大きな成果を出している自治体の事例などを、Facebook社員がレクチャーした。加えて、よりビジュアルを重視するInstagramでの情報発信についてもプレゼンテーションがあり、とくに「ストーリーズ」機能の魅力や、動画投稿の効果などについて語られた。
Facebookの機能の中でも近年とくに注目されているのが、2017年から始まった「災害支援ハブ」だ。「有事の際にこのページから家族や友人の安否確認ができるほか、支援の要請や提供、募金キャンペーンなどを行うことができます。さらにFacebookに投稿された、被災地の画像や動画、記事などのコンテンツがまとめられており、被害状況を知るのにも最適です」と、田野崎氏は強調する。
参加自治体では実際に、Facebookをどう活用しているのか。田沢湖や乳頭温泉、角館武家屋敷などの著名な観光地を持つ仙北市の畠澤史佳氏に聞いた。