SDGs Lab

電気自動車で地域課題を解決(後編)

災害時の電気自動車活用、台風15号の場合

合計50台以上の日産リーフを提供した
本企画では、エプソン販売・PaperLabの協力のもと国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向け、どのようにSDGsを意識して企業活動をするべきか、その実例やレポート、価値ある提言などを紹介する「SDGs Lab」WEBマガジンを月2回発刊します。

地球に住む一員として、限りある天然資源を守り、社会課題を解決し、誰一人置き去りにすることなく、持続的に成長していくこと。それは、公的な機関および民間企業、そして一個人に課せられた使命であり、互いの責任ある行動、消費、協調が欠かせません。

「SDGs経営」「自治体SDGs」を推進し、企業と地方公共団体の活動に変革を起こしていくために必要なことは何なのか。有識者からの提言、変革者の「実践知」をお届けし、皆様の企業活動を変革する一助となれば幸いです。第6回は、防災、エネルギーマネジメント、温暖化対策、観光、過疎化などの地域課題の解決に対し、日本電動化アクション「ブルー・スイッチ」 活動の推進を通じてSDGsに取り組んでいる日産自動車日本事業広報渉外部 担当部長の大神希保氏の後編です。

電気自動車を非常用電源として活用

「ブルー・スイッチ」とは、“走る蓄電池”ともいえる大容量電池の搭載、優れた静粛性、少ない環境負荷、そして、どこでも充電ができるという電気自動車の特徴を生かし、防災、環境、エネルギーマネジメント、エコ観光、過疎化対策といった地域課題を解決する取り組みだ。地域にさまざまな価値をもたらすラインナップの中でも、災害時のBCP(事業継続計画)対策を強化するための電気自動車に、あらためて注目が集まっているようだ。前編でも触れたが、「ブルー・スイッチ」を通じた自治体や企業との災害連携は14件にのぼり、2019年度内には30件に達する勢いだという。

2019年9月、千葉県を中心に大きな被害をもたらした台風15号への対応でも「ブルー・スイッチ」が活躍した。台風15号が上陸した9日以降、県内の多くの地域が停電に陥ったが、復旧が遅れた地域では、長期の停電を余儀なくされた。こうした中、日産自動車は独自で支援活動を開始した。「ブルー・スイッチ」を通じて、合計50台以上の日産リーフを提供し、災害時に電気自動車を非常用電源として使用したケースとなった。今回の支援活動で陣頭指揮を執った大神希保氏に当時の様子を聞いた。

日産自動車
日本事業広報渉外部 担当部長
大神希保氏

「9月10日に長期停電見込みとのニュースを聞き、すぐに翌11日の朝9時半に支援を決め、11時半には日産としてできることをやろうと具体的に動き始めました。まずはアクアラインでアクセスできる木更津市を手始めに、スタッフとSNSで連絡を取り合いながら車を走らせました。さらに、14日には東京電力から各自動車メーカーに支援要請があり、そちらにも日産の電気自動車を提供しました。私たちが提供した電気自動車は移動手段のほか、停電の長期化が見込まれる地域の非常用電源として活用されることになったのです」

具体的な支援活動の内容を見ていこう。9月11日、まずは日産単独で活動を始め、君津市、市原市、木更津市、香取市、富津市の公民館、老人福祉施設、保育園などへ可搬型給電器を搭載した日産リーフ14 台を提供し、30カ所に電力を供給。続いて9月14日には東京電力からの要請を受け、長期停電に陥っている鋸南町、南房総市、館山市、八街市などのコンビニエンスストア、学校、個人住居に対し、日産リーフをさらに39台提供することになった。いずれの車両も千葉県内の販売会社自体が被害を受けたため、横浜の日産本社ほか、東京や神奈川などの販売会社を通じて用意した。

「初動では自治体に直接電話をかけ、危機管理の窓口につないでもらい、支援の申し出をしました。行く先については、すでに役所は非常用電源が確保されていましたので、私たちが出向く先は避難所や老人福祉施設、保育園などが中心になりました。現地の要望を聞きながら、刻々と変わっていく状況の中で、身近なニーズであるスマホ充電の電源や、暑さ対策として扇風機の電源を提供することから始めました。翌日もさらに必要なものがないのかを現場でヒアリングすることに努めました。いちばん要望が多かったのはスマホ充電で、他には夜中、給水所で使用する投光器の電源サポートも少なくありませんでした」(大神氏)

君津市小糸公民館にて。スマホ充電の電源として日産リーフを活用

また、高齢者や幼児のいる老人福祉施設や保育園でのニーズはとくに高く、電気自動車は流動食をつくるためのミキサーのほか、炊飯器や冷蔵庫の電力供給源として、日常の生活インフラを支える役割を担うことになった。

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