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電気自動車で地域課題を解決(前編) 日産の日本電動化アクションとは何か?

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実際、「ブルー・スイッチ」の活動内容を見ると、SDGsで掲げられている4番の目標「質の高い教育をみんなに」や7番の目標「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」をはじめ、全17目標とつながる取り組みも少なくない。

「その中で、とくに今、力を入れているのが11番の目標『住み続けられるまちづくりを』です」と大神氏は強調する。「この目標を実現するためにも、私たちは災害時の電力供給を可能にする“走る蓄電池”の可能性を拡大することを目指しています。とくに自治体は防災に関する関心が高く、熊本市をはじめ多くの自治体と連携協定を結んでいます」

熊本市と日産自動車の連携協定では、日産リーフを熊本市の公用車として利用することでCO2排出量を削減するほか、災害による停電時に日産リーフを無償貸与、電気自動車からの電力を市内19カ所の避難所で使用することなどが記されている。

「日頃から“もしものとき”を想定しても、用意できるものは心理的にも経済的にも限りがあります。例えば、災害時に必要とされる定置型蓄電池は非常に高価であり、コスト面から見ても実際に使いやすいのは電気自動車が現実的です。いわば、“もしものとき(災害時)”と“いつものとき(平常時)”を併用して利用できるのが電気自動車のメリットなのです」

まずニーズを聞いて、ソリューションを考える

こうした自治体との連携は広がりを見せている。過疎化対策もその1つ。福島県いわき市三和・田人地域とは、高齢化や過疎化が進む同市山間部の高齢者の移動手段を確保し、交通弱者をサポートすることを推進している。その仕組みとはミニバンタイプの電気自動車である日産e-NV200を4台利用して、約30名のボランティアが日常の買い物や通院が困難な高齢者などに移動サービスを提供するというもの。過疎地域であっても送電網によってエネルギーを確保できる電気自動車の特徴を生かした取り組みだと言えるだろう。今では同地域の65歳以上の約17%に当たる100名が利用している。

そればかりではない。長野県乗鞍高原では、「星と月のレストラン」と銘打ち、こちらもe-NV200を活用して、「アルプス山岳郷 EVツーリズム」を実施している。電気自動車を用いてレストラン内の照明や調理に必要な電力供給を行っているほか、顧客の送迎までをこなす。まさに“走る蓄電池”である。CO2 排出ゼロのクリーンな移動手段で現地を訪れ、静かな空間を実現することで、豊かな自然を味わえる。このようなプレミアムな時間を演出することだろう。魅力的な観光資源や環境があるにもかかわらず、電力インフラが整っていないために人を呼べなかったような場所でも、巨額の投資をせずに観光地化できるというメリットがある。しかも、電気自動車を使用することによって「環境にやさしい」という特徴を打ち出すことができれば、ブランド価値の向上にも寄与するであろう。

現在、「ブルー・スイッチ」を通じて日産と自治体が結んでいる災害連携協定は、全国で12件あり、2019年度内に30件を目指している。それ以外にも、屋根ソーラー発電と電気自動車活用による電力自給自足(エネルギーマネジメント)や、電気自動車を活用した環境教育として日産わくわくエコスクールを実施するなどさまざまな取り組みを行っているため、週半分は地方出張を続けているという大神氏は次のように話す。

「SDGsの浸透もあって、地方を中心に自治体の反応は非常にいいですね。私たちは、商品軸で考えるのではなく、自治体の皆さんのニーズを聞くことから始まります。そこから日産ができるソリューションを考えていく。日産の強みは、10年以上取り組んできた電気自動車に関するパイオニアとしてのノウハウ、スピード感のある動き、そして発信力だと思っています。そうした強みを生かして、日産は自治体の皆さんが掲げるビジョンを実現できるように共に歩んでいきたいと考えています」

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オフィス内で使用済みの紙から再生紙を作る「PaperLab」。同製品は、機械の衝撃により紙を繊維にまでほぐし、水をほとんど使わず紙の再生を実現する。社内で紙情報を抹消することで、情報漏洩事故防止に役立ち、ガバナンス強化にも有効だ。SDGsのゴールにもある環境意識や企業価値向上のため、現在約40の自治体、企業が導入している。PaperLabの仕組みをより詳しく知る
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