城巡りで新風?「御城印」が密かな人気の理由 「スタンプラリー」を超えた新しい発見がある
「たかが1枚の紙切れに、これほどのストーリーが詰まっているとは!」と、驚くだろう。そう、御城印はまるで城と地域の分身だ。城が2つとして同じもののない個性的なものであるように、御城印も独創的で唯一無二。購入者は御城印を通して、地域の歴史や伝統、技術や美意識に出合える。発行者は、城や地域の魅力やメッセージを、1枚の御城印にギュッと凝縮して全世界に届けることができる。
「プレミアム御城印」購入に4時間待ちの行列も
付け加えるならば、城に貢献できることも魅力の1つだ。御城印の売り上げの一部は、城の整備や保存に充てられることが多い。言い換えれば、御城印の購入を通じて、寄付金を納めることができる。文化財保護の一翼を担え、設備向上やイベント事業の支援に役立て、城との距離を近づくのだから、ファン冥利に尽きる。
例えば郡上八幡城では、地震被害を受けた熊本城(熊本県熊本市)の復興支援として売り上げの一部を寄付しており、寄付金額は3年間で338万4500円に達したという。今後は、独自のビジネスモデルを考え、いかにビジョンを示せるかが、御城印販売の成功の秘訣となりそうだ。
発行されている御城印を見ると、一般的には名の知れていない城も多い。これも、御城印の潜在力だ。御城印は、すべての城において集客のツールになりうるのだ。交通の便が悪い、遺構があまり残っていない、知名度が低いなどのハンデキャップを払拭できる力が、御城印には秘められている。
近頃は、期間・数量限定の「プレミアム御城印」も増えている。今年のゴールデンウィークには、改元記念の限定御城印が多く登場して話題になった。
例えば、上田城(長野県上田市)では、購入に4時間待ちの行列ができたという。イベント限定の御城印も珍しくなく、昨年12月に約2万人を動員した「お城EXPO2018」では、会場限定御城印の整理券がわずか30分でなくなった。来客者へのノベルティや集客のツールとしても、プレミアム御城印は大いに活用の余地がありそうだ。
さらに、これからは「全国各地の連携」がキーワードとなりそうだ。例えば、八戸市や二戸市など7市町の教育委員会では、7城で御城印を販売。地域で連携することで、周辺の城や施設へも足を伸ばしてもらう狙いだ。第一観光(福岡県福岡市)では、今年4月から御城印巡りのツアーが催行され、早くも第4弾まで申し込みを受け付け中という。
企業とコラボレートした企画も増えそうだ。高知県では、前述のアプリ「ニッポン城めぐり」とタイアップ、「土佐の城 御城印ラリー」を来年の2月2日まで、期間限定で開催している。
県内7か所(安芸城【安芸市立歴史民俗資料館】・岡豊城【高知県立歴史民俗資料館】・高知城・ 高知城歴史博物館・浦戸城【坂本龍馬記念館】・本山城【大原富枝文学館】・中村城【四万十市郷土博物館】)に設置されたQRコードを読み取り、GPSで位置情報を送信することでアプリ内のスタンプ帳を埋め、全スポットを制覇すると、土佐和紙を使用した限定デザインの「特製御城印セット」がもらえる。
アプリの特典も得られるとあって、6月27日のイベント開始からすでに500人超が制覇しているという。今後の展開が楽しみな御城印。さまざまな仕掛けと工夫で、城や地域への興味が高まり、訪れるきっかけが増えることを期待したい(本文中のデータは2019年9月2日取材時)。
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