人と組織の相性を可視化する本質的な採用とは 「適性検査」を軽視して人事の本質は語れない

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「外向型・自問型、過程重視・結果重視などの相反する2つの価値観のグラデーションの中で応募者と従業員の位置を示す(下図上)とともに、人が習慣的に取る行動を4つのタイプに分けたソーシャルタイプ分析(下図下)をします。面接のときに役立つのが、これらの結果を踏まえた『将来ミスマッチを引き起こすリスクのある項目』。面接で質問することで、事前に懸念事項を確認することができます」(表氏)

応用的な活用法としては、自社でどのような傾向の人が活躍しているのかを分析し、それと似た応募者をサーチすることでポテンシャルが高い人材の発掘・抜擢や、データに基づいた人事の意思決定を行うピープルアナリティクスに生かす、という使い方も考えられる。

この適性検査の結果を活用できるのは採用の場だけではない。上司・同僚との相性がわかるため、配属決定に役立てる。また、日常的なコミュニケーションの対応ガイドラインとして機能する。例えば「意見を主張する」タイプの社員には、話す量を抑えて意識的に質問して相手の発言を促すことで、円滑な意思疎通を図ることができるだろう。

早期離職率が3年で35%から5%に減少

ミツカリはこれまでに2500社以上が導入し、受検者数は13万人を超える。このデータがさらに精度向上に生かされていくわけだ。では、実際の早期離職防止にはどれくらい役立っているのだろうか。

都内のある物流企業では、16年の早期離職率が35%に達していた。グループ企業の統合でカルチャーがバラバラだったことに加え、採用基準が標準化されておらず地方支店の採用は現地担当者に一任していたため、頻繁にミスマッチが発生していた。

そこでミツカリを導入し応募者に適性検査を受けてもらい、マッチング結果を基準にフィルタリングをかけたり、ミスマッチの可能性を示された点を面接で重点的に確認したりしたうえで、採用の是非を判断するようにした。

その結果、早期離職率が17年は18%、18年は5%程度に激減。社風とマッチする社員の傾向が明確になったほか、早期離職で発生するコストの削減に貢献した。

だが、気になる点もある。近年、組織内の多様性が話題となっているが、自社の風土にマッチする人材を採用することと、人材の多様性を確保することは両立するのだろうか。

「例えば、企業側にとって『論理的である』というポイントが譲れないのなら、それを軸として応募者の価値観や性格をチェックします。それ以外のところ、例えば冷静型なのか情熱型なのか、においては多様性を持たせることが可能です」(表氏)

自社が絶対としている価値観を重点的にマッチしているかどうかを見極める。そうすると、それ以外は自然と応募者によってばらつきが出るため、同じような人ばかり採用してしまう、という心配はないのだ。

ミツカリのミッションは「社会全体の適材適所」。人間関係や社風が合うかどうかは働く人の精神的な満足度に大きく影響を与える。カルチャーフィットというコンセプトが広がれば、より幸せな職場づくりができるようになるのかもしれない。