地図データが変える、日本の配達業務の未来

宅配クライシスに挑む「配達アプリ」を開発

左:ジャーナリスト/キャスター 右:ゼンリンデータコム
明治大学国際日本学部教授 代表取締役社長
蟹瀬 誠一 清水 辰彦
ECサイトが成長する一方で、配達を担うドライバー不足による「宅配クライシス」が現実のものになりつつある。喫緊の課題といえるが、これに対応しようとする新たなサービスも登場し、注目されている。手がけるのは「地図データ」のゼンリンデータコムだ。その活用により前例のないイノベーションが生まれる可能性もあるという。ジャーナリストで明治大学国際日本学部教授の蟹瀬誠一氏と、開発元であるゼンリンデータコム 代表取締役社長の清水辰彦氏がその将来像を語り合った。

宅配ドライバー不足の課題を
解決する「配達アプリ」

蟹瀬 今、ビジネスが革命的な転換期を迎えています。そのカギを握るのが次世代の高速通信「5G」です。消費者に近いところで膨大な情報がよりスピーディーに入手できるようになります。イスラエルや中国などはいち早くこの分野に取り組んでいて新しいサービスも生まれています。一方で、日本は後れを取っていると言わざるをえません。

巨大なECサイトの力はますます強くなるでしょう。今や、スマートフォンのボタン1つで、書籍から日用品、食品などが時間単位で配達されるのが当たり前です。ところがいくらインターネットが発達しても、モノは玄関先まで届けなければならない。「宅配クライシス」という言葉を聞く機会も増えていますが、宅配ドライバー不足は深刻な問題になっています。日本に限らず世界中で、ラストワンマイルがビジネスのボトルネックになると考えられます。

清水 当社は、運送事業者様向けに、モノの移動、人の移動などの動態管理システムを提供してきました。

蟹瀬さんが指摘されたとおり荷物は年々増えているにもかかわらず、宅配ドライバーの数は逆に減っているのが現状です。2018年12月に当社がリリースした「配達アプリ」は、この労働力不足の問題を少しでも軽減できればと開発したものです。

このアプリは全国の住宅地図がアプリ上で閲覧可能で宅配業務に必要な戸建てからビル・マンションまで対応した表札情報や建物名称のほか、一方通行などの道路情報を正確に把握することができます。宅配ドライバー1人当たりの配達荷物数は平均100個以上にのぼる中、1個1分の遅れが1日で数時間のロスを生むラストワンマイルの現状において、「配達アプリ」を活用いただくことで、誤配、遅配を防ぎ、結果的に大幅な時間短縮が可能です。

地図データとの「新結合」で
新たなイノベーションが生まれる

蟹瀬 ゼンリンの地図データは改めて言うまでもなく極めて有用なリソースですね。調査員の方が実際に現地を訪問してデータ作成を行っていると聞きます。日本企業ならではのきめ細かさが発揮されています。

従来このデータには紙でしかアクセスできなかったわけですが、これがデジタル化されることによってその用途が一気に広がることになりますね。

清水 はい。「配達アプリ」では地図データを活用し、配達先の検索、荷物の配達時間帯や、宅配ボックスの有無などの情報の登録、さらには時間帯別の絞り込みなどもできます。

実は「配達アプリ」が誕生したきっかけは、現場の宅配ドライバー様の声なのです。既存サービスであるウェブブラウザ版・ゼンリン住宅地図について調査したところ、個人事業主の宅配ドライバー様に多くご利用いただいていることがわかりました。単にスマートフォンで閲覧できるだけでも「大きな紙の地図を持ち歩くよりも格段に便利」とのことでした。だったら、それにさらに荷物情報や配達ステータスを入力できれば、もっと使い勝手がよくなるのではないかと考えたのです。

蟹瀬 紙の地図をアプリに置き換えただけでなく、新たな付加価値を加えようとしている点が意義深いですね。

オーストリアの経済学者 ヨーゼフ・シュンペーターは、イノベーションの定義の1つとして、ものや力を結合すること、すなわち「新結合」だと述べています。私は、欧米の企業はゼロから一を生み出すのは得意ですが、日本企業には「新結合」の力があり、捨てたものではないと考えています。

ラストワンマイルの問題は日本だけでなく、世界共通の課題になりつつあります。これを解決できるソリューションもグローバルでニーズがあるわけですから、大きなチャンスになりそうです。

清水 世界に類を見ないような住宅地図があったので、これが実現しました。まさにアナログ的なデータと、先進のITの「新結合」だと自負しています。

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