国連で活躍の日本人が見た海外SDGs(前編) 進化を続けるSDGs、民間企業が果たせる役割
――指標も細分化されている気がします。
上田 はい、そのとおりです。目標達成度を測るために指標もより細分化されました。例えばMDGsには「5歳未満の乳幼児の死亡率を、1990年の3分の1にまで引き下げる」というターゲットがありました。インドでも実際に乳幼児死亡率は下がったのですが、細かく見てみると、裕福な家庭の乳幼児死亡率だけが大幅に下がって、貧困層や女子、低カーストの乳幼児死亡率の変化は富裕層より少なかった。すべてをまとめてしまい、全体の平均値のみで見ていると、こうした実態はあまり見えてきません。SDGsでは「誰一人取り残さない-No one will be left behind」という理念を掲げています。それに合わせて、指標も年齢や属性ごと細分化して調査することになったのです。
――より現実に即したゴールであり、ターゲットなのですね。
上田 そうですね。実はSDGsは、ターゲットが多く、あまりに複雑に絡み合っているせいか、現在もSDGsの各国代表と国連機関からなる専門グループによる、指標の見直しが行われています。例えばパートナーシップなど新しい分野では、定義やそれを算出する手法がまだ確立されていない指標もあります。それらを含めて、議論しながらも、とにかく前に進めていこうというわけです。
民間企業に期待する役割、その力
――すべてのステークホルダーが関わるという意味では、民間企業の役割も大きいですね。
上田 そうですね。ユニセフが担当する分野でも、インドの企業と一緒になってアイデアを練る、企業のイノベーティブな手法で行政サービスを提供することを検討するなど、さまざまな形で連携しています。これはMDGsのときには見られなかった大きな変化です。
今、日本でもSDGsへの注目が高まっているそうですね。それもおそらく民間セクターの方に関心を持っていただけていることが大きいのではないでしょうか。今年1月に、東京で行われた国連フォーラムのオフ会に初めて参加したところ、国連職員はわずかで、多くはNPOやNGO、大学、そして民間企業の方々でした。インドで仕事をする私に話を聞きたいと連絡をくださる方も多く、その中には会計事務所やメーカーの方もいました。SDGsの裾野が広がっていることを肌で感じています。
*インタビュー内容は上田みさき氏個人の見解です
10/30公開 インドにおけるSDGs、その実態と日本企業に続く