SDGs Lab

国連で活躍の日本人が見た海外SDGs(前編)

進化を続けるSDGs、民間企業が果たせる役割

インド西部のラジャスタン州ジャイプール市郊外の公立小学校の子どもたち。簡素な施設だが、学校に行けることが子どもたちの一番の夢。弾ける笑顔がそれを物語る。そして、そこから将来の希望が生まれる(©上田みさき)
本企画では、エプソン販売・PaperLabの協力のもと国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向け、どのようにSDGsを意識して企業活動をするべきか、その実例やレポート、価値ある提言などを紹介する「SDGs Lab」Webマガジンを月2回発刊します。

地球に住む一員として、限りある天然資源を守り、社会課題を解決し、誰一人置き去りにすることなく、持続的に成長していくこと。それは、公的な機関および民間企業、そして一個人に課せられた使命であり、互いの責任ある行動、消費、協調が欠かせません。

「SDGs経営」「自治体SDGs」を推進し、企業と地方公共団体の活動に変革を起こしていくために必要なことは何なのか。有識者からの提言、変革者の「実践知」をお届けし、皆様の企業活動を変革する一助となれば幸いです。第3回の今回は、国連職員、ユニセフ インド国事務所社会政策、評価モニタリング部門のチーフである上田みさき氏に国連職員として海外から見えてくるSDGsの現状、日本のSDGsへの取り組み、インドにおけるSDGsの現状についてお話をお聞きしました。

国連、世界の開発現場から見るSDGs

――上田さんは現在、国連児童基金(ユニセフ)のインド国事務所で、インドにおけるSDGsの推進に取り組まれています。そもそもどうしてインドで働くことになったのでしょうか。

上田 原点は小学校の社会科の授業です。国連についての授業があり、国家という枠組みを超えた仕事があることを知り、将来は国際機関で働いてみたいなと考えていました。大学院卒業後、ODA政策のシンクタンクや、民間企業を経て、1991年に、外務省のプログラムに応募し、子どものころからの夢だったユニセフで働き始めました。2年間タイでの経験を積んだ後に正規職員になり、出産による一時退職をはさんで、復帰後はバングラデシュ、ネパールへ。インドには5年前に赴任しました。ジュネーブのILO本部にいたこともありますが、私は開発の現場のほうが好きですね。

――現在の仕事内容を教えてください。

上田 インドのユニセフには、現在約500人の職員がいます。インターナショナルスタッフは約50人で、日本人は私1人。現在は社会政策評価モニタリング部門のチーフとして、政府に向けて社会政策の計画や実施に関する提言を行っています。

提言先は中央政府だけではありません。インドはアメリカと同じような連邦制で、28の州から成り立っていますが、州の中には日本とブラジルの人口を合わせたくらい大きな州もあります。社会政策の策定・実行という意味では、州政府が果たす役割も大きく、ユニセフは28州のうち16州と密に連絡を取りながら活動しています。

上田みさき氏
国連児童基金(ユニセフ)
インド国事務所
社会政策、評価モニタリング部門チーフ

――ユニセフは現地において具体的にどのようにSDGsに取り組んでいるのでしょうか。

上田 インドにおけるSDGsは、政策委員会と統計省がイニシアチブを取って計画を策定しています。SDGsには全17のゴールがありますが、ユニセフがサポートを担当しているのは、そのうちの「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「健康的な生活を」「質の高い教育をみんなに」などを含めた9つのゴール。それぞれのゴールにターゲットや指標がありますが、インドではデータを集めることが難しかったり、具体的なプログラムがないことも多い。それらを整備して計画を策定するためのお手伝いをしています。

――SDGsは2015年に採択されました。前身となったのは2000年に採択されたMDGs(ミレニアム開発目標)ですが、SDGsはMDGsとどのような違いがあるのでしょうか。

上田 MDGsは開発が主なテーマだったので、実施するのは開発途上国だけでした。しかしSDGsは、開発途上国に限らず、先進国も取り組んでいることが大きな違いです。世界には経済、社会、環境などの分野で多くの共通の課題があり、開発をもっと総合的に参画型で捉えるべきだという認識が高まり、途上国に限らず、先進国も同一目標で取り組むことになりました。

また国だけでなく、市民団体、民間企業など、あらゆるステークホルダーが関わることになったことも特徴です。ステークホルダーが増えると、それらの声をまとめて集約するのは難しい。その影響もあって、MDGsのときは8ゴール、21のターゲットだったのが、今回は17ゴール、169ターゲットに増えました。

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