Japan M&A Conference 2019 M&Aトレンドをどう追い風とするか
企業価値拡大に貢献するM&Aガバナンス
アクセンチュアの河合隆信氏は、売り手優位、クロスボーダー、新ビジネス創出など多様化する目的によって、難しさを増すM&Aでは「判断の質とスピードの両立が必要」と訴え、M&Aガバナンスを機能させる方法を挙げた。まず、案件責任者は事業部トップの下の第2階層から選任し、責任ある判断を促すため、価格算定から計画達成まで一貫したオーナーシップを持たせ、買収後3年はポジションを固定する。第2に、重要論点にフォーカスし、説明の詳細度も定義、M&Aに特化した審議会で検証するプロセスを推進する。3つ目に、案件責任者と最終意思決定者の役員らとの知識ギャップを埋める外部専門家の起用、を提案した。
デジタル時代のCVC
~先進事例から浮き彫りになったValue upの壁
アクセンチュアの樫宿恵生氏は、大企業がスタートアップとの連携を求めて推進する「コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)」の課題を概観した。CVCを活用した価値最大化に向けて、投資先とのシナジーによる戦略リターンと中長期での存続のための財務リターンの間でバランスの取れたゴール設定、注力ドメインから詳細なユースケースまで含めた解像度の高い投資戦略策定を求めた。さらにCVCの実行局面においては、設立直後のケイパビリティー不足に起因する「初動の壁」、投資後の管理人材不足などの「スケールの壁」、その後の「グループ間連携の壁」と段階的に遭遇する課題があることを指摘し、その対応についても説明した。
招待者講演
~大企業のスタートアップとの共創。トップランナーが見ている世界
スタートアップとの共創によるテクノロジー企業群を目指して設立され、KDDIのCVCの役割も担うSupershipホールディングスの八重樫健氏と、そこに参画するアドベリフィケーション事業スタートアップ、Momentumの高頭博志氏が登壇。八重樫氏は、案件ごとに財務と戦略のどちらのリターンを追求するかを決めたうえで、「M&Aをする気概で投資することが大切」と述べ、同社アセットを使って投資先の成長を重視する考えを説明した。高頭氏は、Supershipのトップからの紹介を機に、IT大手と提携したことを例に、大企業を動かすのが難しいスタートアップが「ビジネスデベロップメントのリソースを得られたことが大きい」と述べた。
アクセンチュアの廣瀬隆治氏は、M&A、CVCの成功は「出資先に何を提供できるかがカギ」として、事業部門の協力も得て資金にとどまらない支援の重要性を強調。最後に、モデレーターの横瀧氏が「皆さんの悩みをわれわれに寄せていただきたい」と会場に呼びかけた。