物流の枠組みを超えた発想で付加価値を創造 変わりゆく物流の現場にどう対応すべきか

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技術革新が加速させた物流施設の省力化・省人化

――物流の効率化において、物流施設に求められる役割や機能とは何でしょうか。

黒川 コンビニができたばかりの頃は、メーカーが商品を直接配送していたため、店舗には1日70台ものトラックが来ていましたが、商品をまとめて配送することで、現在は10台以下になりました。このように、輸送を効率化するには共同輸送が必要で、その拠点であり結節点の役割を果たすのが物流施設です。

物流には「包装」「輸送」「保管」「荷役」「流通加工」およびそれらに関連する「情報」の6つの活動があり、物流施設は「輸送」以外を担ってきました。

しかし最近では、品質検査や商品の組み立て、修理など、これまでにはなかったさまざまな機能が求められるようになっています。アパレル関連企業のためにモデル撮影や採寸を行うスペースが設けられたり、ライブやイベントに使用されたりと、単に物流という枠組みにとらわれない、新しい発想による付加価値の創造も目立っています。

――物流施設はまだまだ労働集約的側面が強いイメージです。

黒川 人がやっている作業を機械に置き換えることで省力化・省人化が進んでいます。これは今に始まったことではありませんが、技術革新によって高機能化し、作業しやすくなったことで、導入が加速しているのです。例えば、ピッキング作業は「移動」「探す」「取り出す」という3つの作業に分かれますが、多くの人手が必要なうえ、時間がかかる割に価値を生まない作業です。

しかも、深夜にネット通販で注文した商品を翌日配送するには、深夜勤務をしなければなりません。人手不足が解消しなければ、サービスレベルの維持は困難です。

そこで開発されたのが、人がいる所まで棚ごと商品を運ぶロボットやピッキング作業すべてを自動化した物流施設などです。これらは、省力化・省人化に大きく貢献するとともに、ミスの防止にもつながっています。

――職場環境も大きく変わっているそうですね。

黒川 バリアフリーの推進や託児所の併設など、SDGsの観点で施設づくりに取り組む動きがあります。働き手確保のために人が通いやすい場所という観点で立地を検討したり、勤務時間を柔軟に組み替えられるよう工夫したりする事例も見られます。

物流施設は今、SDGsや働き方改革にとって重要な拠点と言っても過言ではないでしょう。以前の殺風景なものとは見た目も中身も大きく変化しているのです。

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