「マネジメントできない」企業に足りない発想 机上の空論では、何も前に進まない
プロジェクトマネジメントの「伴走者となる」PMO
「当社が事業の軸に据えているのが『PMO』(プロジェクトマネジメントオフィス)。これは端的に言うと、意思決定支援のコンサルティングです。当社が蓄積したプロジェクトマネジメントの知識体系と経験、ノウハウを使って企業が抱える課題を抽出し、解決に向けた組織の動かし方を考え、支援していくサービス。対象が現場から経営層まで幅広いことが特徴です」と語るのは、マネジメントソリューションズ(以下、MSOL:エムソル)の後藤年成氏だ。
MSOLは今年で創業14年。昨年東京証券取引所マザーズ上場を果たして注目を集めている成長企業だ。単に経営戦略や構想を描くだけでなく、顧客と伴走しながらプロジェクトの実行に取り組む点が、同社の大きな特徴である。
「今企業には、適切なマネジメントのできる人材が圧倒的に不足しています。収益性の高いプロジェクトが多くあるのに、それらをマネジメントしきれていない。そのような顧客のニーズに的確に応えられているのが成長の要因です」(後藤氏)
企業におけるプロジェクトは自社内の部署、部門をまたぐだけでなく、複数の企業が参加するケースも多い。ともすれば各部門・企業の利害が相反したり、ゴール設定の混乱、方向性のズレなどが生じることもある。そこをMSOLは、専門教育を受けたプロフェッショナルがプロジェクト最適の観点から調整し、成果の創出に貢献していく。
だが部外者であるMSOLが、組織の壁を打ち破って実行力や調整力を発揮するのは簡単なことではない。「そこは地道な信頼の積み重ねです。まずは『皆さんの力になるためにここに来ました』という姿勢でお手伝いを始めます。周囲の小さな悩みを一つひとつ解決していき、最終的には情報のハブとなって『困ったらMSOLに相談しよう』と思われるような状況をつくっていくのです」(後藤氏)。
創業当初はIT開発プロジェクトが業務の中心だったが、現在は組織開発をはじめ、トップマネジメントに関わる業務が増加している。今後は顧客企業の組織階層における縦の拡大に加え、裾野の拡大を狙う。
包括的なPMOから、必要なものだけを切り出す発想
同社では、多岐にわたるサービスの中から顧客が必要とするソリューションだけ、または必要な時間だけを切り出して提供する「Shared PMO」を展開している。
「当社のPMOは、プロジェクト内での合意形成や計画策定、状況の可視化など幅広いソリューションを提供しています。しかし、フルタイムでコンサルタントが参画するとどうしてもコストは膨らむ。そこで、特定のソリューションに絞ったり担当者の稼働時間を限定したりすることでコストを抑え、より利用しやすくしたのが『Shared PMO』です」
同社でShared PMO事業推進マネジャーを務める小宮啓太郎氏はそう説明する。これには顧客を増やすとともに、自社の社員に柔軟な働き方を提供する狙いもあるという。
「MSOL社員の多くは共働き世帯。家事や育児には膨大な時間が必要な一方、プロジェクトの現場はピークになると朝早くて夜も遅くなりがち。無理な長時間労働が続けば結局、夫婦の片方が離職を迫られることになります。あるいは、親の介護のために退職せざるをえないケースもある。これは個人のキャリアにとっても企業にとっても、そして社会全体にとっても大きな損失だと考えました」(小宮氏)
そこで、コンサルタントが限定的な時間で働けるソリューションをつくったというわけだ。例えば「リスクマネジメントだけ頼みたい」という依頼に対しては、コンサルタントは週に1度の会議に参加したうえで、リスクの洗い出しや対策のリストアップ、仕事の割り振りなどを整理して問題解決に導く。
現在同社で、「Shared PMO」に専業で従事しているのは6名。これに、産休・病休から復帰した社員などが複数加わっている。
「最終的に目指しているのは社会全体の生産性の向上であり、『Shared PMO』はあくまでその手段です。顧客の期待に応えるサービスを効率よく実現し、さらに働きやすい職場環境を整えていく。こうした考えで進めています」(小宮氏)