
東京・中央区の京橋エドグランで2019年9月11日、「ホットペッパーグルメ外食総研」主催のイベント「外食産業におけるキャッシュレスの今とこれからを考える」が開かれ、会場には多くの記者が詰めかけていた。
イベントでは、「キャッシュレスに向き合う外食産業」をテーマにパネルディスカッションが行われ、モデレーターを務めた同総研エヴァンジェリストの竹田クニ氏のほか、経済産業省 商務・サービスグループ キャッシュレス推進室長の津脇慈子氏、同総研上席研究員の稲垣昌宏氏、クレジットカード・電子マネー・QR・ポイントも使えるお店の決済サービス「Airペイ」サービス責任者 塩原一慶氏による活発な議論が交わされた。
1万人を対象にした「外食市場調査」の注目度
中でも注目を集めたのは、同総研がまとめた「2018年度 外食&中食概況」だ。外食産業の調査・研究機関である同総研は12年10月から毎月、首都圏と関西圏、東海圏の男女約1万人を対象にした外食市場調査を実施している。外食市場について個人をベースにこれだけの規模で行っている調査は珍しく、マーケターや飲食店関係者からの注目度は高い。
調査によると、18年度の夕食における外食市場は、延べ外食回数15億9735万回(前年比1.2%増)、単価2589円(同0.2%増)、市場規模は4兆1350億円(同1.5%増)に上るとみられる。中食市場(1兆2188億円)の伸び(同4.9%増)には劣るものの、堅調といっていい。
今回は消費税増税直前の消費動向についても調査を行っている。それによると、増税に際して節約を意識している人は約7割。増税前に何か準備する人は6割以上で、具体策として「日用品・酒の買いだめ」「ポイント還元の準備」を挙げる人が多かった。
消費者が増税対策の1つとして”ポイント還元”を挙げるのは、政府の「キャッシュレス・消費者還元事業」が念頭にあるからだろう。これは19年10月から20年6月まで、登録した中小・小規模店舗でキャッシュレス決済すると、最大5%のポイントが還元される制度だ。5%還元であれば、消費税率引き上げ分以上に得をする。
上席研究員
稲垣昌宏氏
実際、消費者の関心は高い。同総研の調査によると、「キャッシュレス・消費者還元事業」を知っている人は約8割。調査を行った稲垣氏は、「調査を行ったのは、詳細がまだ発表されていなかった今年7月。この時点で多くの人が認知していることから、関心の高さがうかがえます」と分析する。
そもそも同事業の背景には、消費税増税だけでなく、日本のキャッシュレス対応の遅れがある。津脇氏は、日本のキャッシュレスの現状を次のように語った。
商務・サービスグループ キャッシュレス推進室長
津脇慈子氏
「日本のキャッシュレス決済比率は24%で、主要な先進国に比べると非常に低いです。キャッシュレス決済は消費者、事業者共にさまざまなメリットがあるのですが、”食わず嫌い”が起きているのが現状です。今回の事業をきっかけに普及を進め、25年までに40%、将来的には世界最高水準の80%を目指します」
では、キャッシュレス決済に対応することで、飲食店にはどのようなメリットがあるのか。塩原氏は、「決済手段の多様化」と「インバウンド消費拡大」に着目し、こう指摘する。
塩原一慶氏
「クレジットカードや交通系カードに加えて、近年急速に普及し始めたQRコード決済など、決済手段が多様化しています。飲食店は、こうした”揺らぎ”を許容して幅広く対応することが大切です。また、訪日外国人が増えていますが、訪日外国人はキャッシュレスに慣れていて、現金しか使えないと、消費のアップサイドが限定されてしまうでしょう」
売り上げを伸ばす機会が増えることは飲食店にとって大きな魅力だが、キャッシュレス決済対応が秘めるポテンシャルはそれだけではない。津脇氏が強調するのは、効率化と、その先にある付加価値の向上だ。
「昨今は人手不足が課題になっていますが、キャッシュレス決済が進めば、レジ締めをする、釣り銭を準備するといった作業が省力化されて、人件費を削減することができます。さらに、効率化によって生じた時間を顧客接点に充てれば、サービスや製品の付加価値を向上させていくことも可能です。そこを目指してこそ、キャッシュレス化の本当の意味があるのではないでしょうか」(津脇氏)
キャッシュレスに対する懸念を解決するテクノロジー

このようにキャッシュレス決済対応のメリットは大きい。ただ、一方で、コストやオペレーションの面で不安を持つ飲食店経営者が多いのも事実だ。こうした現場の声には、どのように応えていくのだろうか。
「『キャッシュレス・消費者還元事業』に登録すると、端末本体と設置費用は無料です。手数料も実施期間中は実質2.17%以下になるように制度設計されています」(津脇氏)
「現金よりキャッシュレスのほうが明らかに速いのですが、スタッフにオペレーションをきちんと指導しないと、かえって時間がかかるのではないかという懸念を持つお客様がいらっしゃいます。しかし、そこはテクノロジーで解決できます」(塩原氏)
「Airペイ」を例に見てみると、決済手数料は業界最安水準の実質2.16%で、月額固定費や振込手数料は無料。専用端末の操作もシンプルで簡単だ。飲食店経営者が安心して導入できる環境は整っているのだ。
同総研では、「キャッシュレス・消費者還元事業」を受けて消費者がどのような消費行動を取るのか、引き続き調査・研究をしていくという。これからの日本のキャッシュレス動向を占ううえで、同総研の今後のリポートから目が離せない。