住商が物流業界の課題解決に乗り出した理由 最新鋭物流施設「SOSiLA」が目指す先
総合商社の強みを生かした物流施設の新しいかたち
大手総合商社の住友商事が、消費地近接型物流施設「SOSiLA」の展開を加速させている。2016年9月に「SOSiLA習志野茜浜III」が竣工したのを皮切りに、首都圏と関西圏で7施設が稼働、6施設を開発中である。
「実店舗とネット販売の融合が進み、単に実店舗で買い物をするだけではない、新しい購買体験を提供するサービスが増えています。そのため、荷物を素早く、効率的に届けるためのサポートができるかどうかが、物流施設の課題となっています。
同時に、『宅配クライシス』という言葉があるように、ドライバーや物流施設内で働く従業員の確保も大きな課題です。物流施設内で働く従業員の有効求人倍率が4倍を超える地域もあるほどで、物流全体のコストアップ要因になっています。
この相反する2つの課題を解決するために誕生した、物流施設の新ブランドが『SOSiLA』なのです」(住友商事 不動産投資開発事業部 笹子卓真氏)
同社はこれまで、不動産デベロッパーとしてオフィスビルや商業施設、分譲マンションなどの開発を手がけてきた。そのノウハウや経験の蓄積に加え、グループ内にはスーパーのサミットや通販のジュピターショップチャンネル、ケーブルテレビのジュピターテレコムなどがあり、BtoC企業が必要とするモノやサービスの流れについて体系的に理解し、提案できる素地がある。
また、物流サービスプロバイダーとしての3PL部隊や商用トラックを扱う自動車部隊、業務の自動化やAI、IoTなどの先端技術に投資するベンチャーキャピタルを傘下に持っており、物流効率化をサポートできる。
こうした総合商社ならではの強みを生かし、人と社会をつなぐ、物流施設の新しいかたちを目指すというのが、ブランドコンセプトであり、競合他社との差別化ポイントでもある。
「社会とのつながり(Sociability)、環境への配慮・持続的成長(Sustainability)、人と労働環境への配慮(Individuality)という3つのテーマに基づき、『SOSiLA』を通して『現代の物流施設が担う役割と機能はこうだ』と提案していきたいと考えています」(同部 堤亮介氏)
床を貸すだけの時代は終わり入居後の支援がより重要に
物流に求められるサービスレベルの高まりと、働き手の確保という2つの社会的課題の解決について、同社が出した答えが、消費地近接型物流施設を展開し、ダイレクトにアプローチするということだ。
具体的にはこうだ。BtoCおよびBtoBtoCのエリア配送拠点に対応するため、消費地から離れた工業地帯や郊外などの従来型の立地ではなく、消費地近接型とすることで配送距離を短縮。仮に配送距離が半分に縮まれば、注文から消費者の手元に届けるまでの時間を大幅に短縮でき、1日1.5往復しかできなかったトラックが3往復できるようになる。
つまり、多頻度配送が可能となるうえ、ドライバーやトラックの負担軽減、配送費用の削減に貢献できるのだ。消費地に近いエリアは、働き手が居住しているエリアでもあるため、通勤しやすく、人手確保の面でも優位性を持つ。