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企業活動にSDGsが不可欠な理由(後編) SDGsが生み出す新しいビジネスの種とは?

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では、実際にSDGsを活用して、ビジネスを拡大している企業には、どのような実例があるのだろうか。

「例えば、化学メーカーでは、業界全体としてソリューション型ビジネスへの転換を検討する流れがありますが、ある社では、製品やサービスがお客様や社会にどのように広がっていくのか、そして、そこで生まれる課題をビジネスとしていかに解決していくのかについて、SDGsを基に考えるようになっています。これまでは、素材だけを販売する、といった部分的なものだったビジネスが、大きく社会全体にどのように貢献できるかを、SDGsを参考にして考えると、新しいビジネスのきっかけが生まれるのですね。今注目を集めている海洋プラスチック問題なども、まさにSDGsの問題であるといえ、今まで関心のなかった層も、熱心に取り組むきっかけとなっていますよね。この動きは、化学メーカーだけではなく、家電・精密機器メーカーでも、同じです。従来のCSR活動をビジネスにより近づけていく形で、売り方やサービスを変える動きも出ています」

さらに村上氏は続ける。

「つまり、環境とビジネスをつなげていくという考え方が今、浸透し始めているのです。SDGsは開発目標ですが、途上国支援ではなく、先進国も途上国も、等しく取り組む未来を変える目標です。とくにSDGsをうまく取り入れている企業では、成長と結び付けることで経営ビジョンや成長戦略に、ひも付けているところが多いですね」

現在、日本企業では、実際にSDGsをもとにした製品やサービスの開発を進めるところも増えている。さらにSDGsに関する顧客の関心の高まりもあり、営業面においても新たな顧客獲得につながるケースが増加しているそうだ。

SDGsという基準で既存のビジネスを見直す

では、これからSDGsに関する動きはどのように展開していくのだろうか。

「現在のSDGsは2030年までの開発目標を示したものですが、その中に介護や高齢化の課題を具体的に意識したターゲットはまだありません。これから先、世界がどうなっていくのかという点において、少子高齢化が進む日本だからこそできる世界に向けた提案があると思います。日本は新たなルールやスタンダードを作るのは苦手かもしれませんが、健康長寿や高齢化といった観点から、提案をしていくことは大事ではないでしょうか」

さらに、どんな業種であれ、SDGsに取り組むことで、今までにないメリットが生まれると村上氏は指摘する。

「自動車メーカーは、これまでも環境分野は経営の重要課題として積極的に取り組んできましたが、これからはSDGsを参考に、交通事故を減らすなどインフラとセットで取り組むことで、新たなビジネスの展開が生まれるかもしれません。今までしてきたビジネスも、SDGsに照らし合わせて見直すことで、新たな可能性が見える場合があるのです。その意味で今、活用が進みつつあるAIやビッグデータも、誰のために使うのか。そのとき企業は、特定の人たちだけではなく、多くの人の役に立てるかどうかが問われてくると思います」

最後に、SDGsに積極的に取り組みたいと考えているビジネスパーソンに向けて、村上氏はこうアドバイスを送った。

「SDGsの魅力は、たくさんのテーマがあり、それに対してビジネスでいかに貢献していくかという解が無限にあるところだと思います。だからこそ、あまり固く考えるのではなく、まずは自由に発想し取り組むことで、部門横断的な発想を生んだり、自社の魅力を再発見したりするきっかけにしてほしいですね。小中学校といった教育の現場でもSDGsについて教える機会が増えています。これからSDGsは、世代を超えてビジネスパーソンが身に付けておくべき共通言語になり、一人ひとりが持続可能な社会の実現をどれだけ真剣に考えているかを問われるようになるでしょう」

「PaperLab(ペーパーラボ)」とは?
オフィス内で使用済みの紙から再生紙を作る「PaperLab」。同製品は、機械の衝撃により紙を繊維にまでほぐし、水をほとんど使わず紙の再生を実現する。社内で紙情報を抹消することで、情報漏洩事故防止に役立ち、ガバナンス強化にも有効だ。SDGsのゴールにもある環境意識や企業価値向上のため、現在約40の自治体、企業が導入している。PaperLabの仕組みをより詳しく知る
※「PaperLab」は機器内の湿度を保つために少量の水を使用します。
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