社会課題解決と企業価値向上の両立を SDGsカンファレンス2019
基調講演III
SDGs × イノベーション
環境ビジネス、地方活性化、途上国ビジネスの支援を行う見山謙一郎氏は、課題解決のために想像力を働かせることで、アイデアやテクノロジーが生まれ、イノベーションが起きるとして「イノベーションを起こすために、今の日本に不足しているのは想像力」と語った。例えば、オフィス内で紙をリサイクルしたいという夢から生まれた「PaperLab」は、未来に向けた想像力がもたらしたイノベーションと指摘。また、途上国支援ではなく、先進国を含むすべての国が課題当事者として取り組むことを求めるSDGsは、10年先の未来を想像し、創造するツールと指摘し「先進国に駆け上がり、環境問題を克服してきた経験を持つ日本は、途上国と共にSDGsの課題を解決し、未来を創造できる力がある」と語った。
基調講演IV
G20後の世界と社会課題の解決
ー今後の経営戦略とSDGs
世界の課題を英語で議論するワークショップを開催する石倉洋子氏は「企業が主役にならなければ世界的な課題は解決できない」と語った。SDGs達成には、テクノロジーが果たす役割も大きく、日本は、人を中心にしたテクノロジーで、個人が望む生活を実現するソサエティー5.0を提唱。ヘルスケアや物流など、さまざまな分野の課題解決が期待されている。企業は、SDGsに取り組むことで、社会課題に対する感度が高い若年層の人材を引きつけ、新規事業の検討材料にもできると指摘。SDGsの取り組みの進捗を測る共通の尺度がないといった問題はあるが、一つひとつ克服しながら「私たちの会社は、どんな社会をつくりたいのか、を世の中に向かって語れるように、つねに自らに問い続けることが大切になる」と語った。
ディスカッション
経営戦略としてのSDGs
オムロン サイニックエックスの諏訪正樹氏は、社会課題が解決された近未来を想像し、実現に必要な技術などの事業アーキテクチャーを設計する「近未来デザイン」創出の拠点として設立された同社を紹介。人の代わりとしての機械から、両者の協働、さらに機械が人の能力を拡張する融和へ発展する「人と機械の関係性」などを起点に、未来予測からソリューションを提示するオムロングループの価値観「ソーシャルニーズの創造」がSDGsにつながると語った。
サントリーの福本ともみ氏は、「水と生きる」という「グループの約束」を紹介。同社は、サステナビリティを成長戦略とともに中期経営計画に取り込み、事業の中で推進する。グローバル企業として、水源涵養や次世代環境教育の水育、30年までにペットボトルの原料を100%リサイクル素材あるいは植物由来素材にすることなどを目指す。また、社内大学などを通じて社員と理念を共有し、SDGsが掲げる環境・社会課題の解決に取り組んでいる、と説明した。
両氏に見山氏を加え、笹谷氏が司会をしたディスカッションでは、見山氏は「企業にとってSDGs経営とは、理念経営そのもの」とコメント。企業理念とSDGsへの取り組みの関係などについて話し合った。
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