企業活動にSDGsが不可欠な理由(前編) 日本企業におけるSDGs、評価と課題
多くのビジネスパーソンにとっては、過去にCSR(corporate social responsibility=企業の社会的責任)といった活動に取り組んできたこともあり、SDGsやESGと言われても、どう使い分けるのか、また、どれを使えばいいのか、悩む人が少なくないかもしれない。まずCSRを簡単に定義すると、言葉の中に責任という意味が含まれることから、社会からの要請であり、企業を取り巻くステークホルダーに対して”応答”していくものと捉えられる。また、ESGは金融業に対して国連が使い始めた言葉で、世界中の金融機関や投資家が注目する、企業経営の持続可能性を測る“指標”である。SDGsは、持続的な社会を実現するゴールを示したもので、いわば世界共通の“未来予想図”だ。
では、企業の現場では、こうした言葉に対して、どのような認識を持っているのだろうか。村上氏が語る。
「例えば、これまでCSRに取り組んできたが、もう少しビジネス寄りにするためにサステナビリティという部署名に変えたいという企業もあり、企業ごとの個性が出てきています。ただ、SDGsが掲げる17の開発目標すべてに対応しなければならないのだろうかといった誤解をされる方もいらっしゃいます。その意味では、まだまだ理解が進んでいないところもあります。国連の提唱する目標となると、遠い存在に感じたり、規制として受け止めたりする人もいるのは仕方ないのかもしれませんね」
SDGsを取り入れるハードルを下げる
一方、海外企業の取り組み状況はどうなのだろうか。村上氏が続ける。
「欧米でいえば、欧州のほうが積極的に取り組んでいる状況に思えます。環境政策で世界を牽引しようとしていますし、パリやジュネーブなど国際機関の本部もたくさんあり、生活者にも倫理消費が広がっている分、熱心なのかもしれません。では、米国の企業が熱心ではないのかといえば、そうではなく、企業によっては熱心に取り組んでいるところも増えています」
いずれにしても日本と海外の取り組みの濃淡は、SDGsに対して、必ず対応しなければならないルールや規制のように受け止めるのか、または、その考え方に賛同して自分のビジネスやイノベーションに取り入れていくのかという違いがある。日本の企業はSDGsに対して「貢献する」という表現が多い一方で、欧米の企業では、「支持する」「サポートする」といった表現が少なくなく、そのアプローチの仕方もかなり異なっているという。取り入れることのハードルを下げてまずはトライしてみようという姿勢が強いのだそうだ。
「今、街を歩いているとSDGsバッジを付けている人をよく見かけますが、それがきっかけで話が弾んで、実際のビジネスにつながるケースが出てくるかもしれません。これからさらにSDGsの考え方を広げるためにも、『SDGsやESGはこうあるべき、こうしなくてはいけない』と考えるよりも、より自由な考え方や受け止め方をしてもいいのではないでしょうか。SDGsは規制ではなく、あくまで世界をよくするための目標です。もっと大きな視点を持って、自分のものにしていくことが大事だと思います」
9/25公開予定・後編「SDGsが生み出す新しいビジネスの種とは?」に続く