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企業活動にSDGsが不可欠な理由(前編) 日本企業におけるSDGs、評価と課題

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  • エプソン販売 制作:東洋経済ブランドスタジオ
本企画では、エプソン販売・PaperLabの協力のもと国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向け、どのようにSDGsを意識して企業活動をするべきか、その実例やレポート、価値ある提言などを紹介する「SDGs Lab」WEBマガジンを月2回発刊します。地球に住む一員として、限りある天然資源を守り、社会課題を解決し、誰一人置き去りにすることなく、持続的に成長していくこと。それは、公的な機関および民間企業、そして一個人に課せられた使命であり、互いの責任ある行動、消費、協調が欠かせません。「SDGs経営」「自治体SDGs」を推進し、企業と地方公共団体の活動に変革を起こしていくために必要なことは何なのか。有識者からの提言、変革者の「実践知」をお届けし、皆様の企業活動を変革する一助となれば幸いです。第1回は、日本総合研究所 創発戦略センターのシニアマネジャーである村上芽氏に話をお聞きしました。

多くの企業や投資家などを中心に世界的な広がりを見せているSDGsとESG。その取り組みは、ここ数年、日本でも確実に浸透してきている。SDGsとは「Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標」のことを指し、2030年までに17の開発目標の実現を目指すもの。先んじて取り組みが広がっているESGはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3つの言葉の頭文字をとったもので、この3つの要素に着目して企業を分析し、すぐれた経営をしている企業を「ESG経営」、またそうした企業に投資することを「ESG投資」と呼んでいる。

私たちが企業活動を続けていくうえで、なぜSDGsやESGを意識しなければならないのか。そして、それに取り組むことで、どのように企業活動は変わっていくのか。多くのビジネスパーソンにとっては、まだおぼろげな認識しかないかもしれない。しかし、SDGsやESGの意義や効用をもっと知れば、企業活動に参加することの意義やその先に広がる世界への見方がより大きく変わることになるはずだ。

国際社会で評価される日本とSDGs

今回登場する日本総合研究所 創発戦略センターでは、1999年から環境関連の投信ファンドの開発に携わり、2006年に国連でESGが提唱され始めたと同時に、同研究所が設立したESGリサーチセンターを立ち上げた。同センターに所属する村上芽氏は、主に金融面からESGやSDGsに関わり、環境分野だけでなく、女性活躍や働き方改革にも視野を広げてきた。現在はESGやSDGsを通して、成長する企業やビジネスモデルなどの研究を進め、多くの企業に対して、講演やコンサルティング活動を続けている。そんな村上氏は現在の日本企業のSDGsやESGの取り組み状況についてどう見ているのだろうか。

村上芽氏
日本総合研究所
創発戦略センター
シニアマネージャー

「SDGsが提唱された15年から今年で4年目。政府や経団連は世界の流れを見て、いち早く取り組んできましたが、日本の現在の状況を世界的に見ると、実績の評価はまだまだこれからという段階にあります。とくにジェンダー平等や気候変動というテーマにおいて、日本は途上にあるといえます。もちろん国際的な優良企業や金融機関などは関心も高く、感覚的にはグローバルな企業活動をしている企業ほどサステナビリティに敏感だと思いますが、日本企業全体としてみると、まだ始まったばかりと言わざるをえないのです」

ただ、日本企業でも高く評価されている分野もある。

もともとESGのなかで環境分野については、日本は大企業から中小企業まで技術力が高いと評価されていました。例えばと、リサイクルや省エネの技術やシステムなどです。したがって、「目標12:つくる責任、つかう責任」や「目標9: 産業と技術革新の基盤をつくろう」に馴染みを感じる企業は多いと思います。SDGsが提唱される前から、サスティナビリティを重視し、その実現に独自に取り組んできた企業は数多くあり、SDGsとの関連で、多くの実績を残していると思います」

多くのビジネスパーソンにとっては、過去にCSR(corporate social responsibility=企業の社会的責任)といった活動に取り組んできたこともあり、SDGsやESGと言われても、どう使い分けるのか、また、どれを使えばいいのか、悩む人が少なくないかもしれない。まずCSRを簡単に定義すると、言葉の中に責任という意味が含まれることから、社会からの要請であり、企業を取り巻くステークホルダーに対して”応答”していくものと捉えられる。また、ESGは金融業に対して国連が使い始めた言葉で、世界中の金融機関や投資家が注目する、企業経営の持続可能性を測る“指標”である。SDGsは、持続的な社会を実現するゴールを示したもので、いわば世界共通の“未来予想図”だ。

では、企業の現場では、こうした言葉に対して、どのような認識を持っているのだろうか。村上氏が語る。

「例えば、これまでCSRに取り組んできたが、もう少しビジネス寄りにするためにサステナビリティという部署名に変えたいという企業もあり、企業ごとの個性が出てきています。ただ、SDGsが掲げる17の開発目標すべてに対応しなければならないのだろうかといった誤解をされる方もいらっしゃいます。その意味では、まだまだ理解が進んでいないところもあります。国連の提唱する目標となると、遠い存在に感じたり、規制として受け止めたりする人もいるのは仕方ないのかもしれませんね」

SDGsを取り入れるハードルを下げる

一方、海外企業の取り組み状況はどうなのだろうか。村上氏が続ける。

「欧米でいえば、欧州のほうが積極的に取り組んでいる状況に思えます。環境政策で世界を牽引しようとしていますし、パリやジュネーブなど国際機関の本部もたくさんあり、生活者にも倫理消費が広がっている分、熱心なのかもしれません。では、米国の企業が熱心ではないのかといえば、そうではなく、企業によっては熱心に取り組んでいるところも増えています」

いずれにしても日本と海外の取り組みの濃淡は、SDGsに対して、必ず対応しなければならないルールや規制のように受け止めるのか、または、その考え方に賛同して自分のビジネスやイノベーションに取り入れていくのかという違いがある。日本の企業はSDGsに対して「貢献する」という表現が多い一方で、欧米の企業では、「支持する」「サポートする」といった表現が少なくなく、そのアプローチの仕方もかなり異なっているという。取り入れることのハードルを下げてまずはトライしてみようという姿勢が強いのだそうだ。

「今、街を歩いているとSDGsバッジを付けている人をよく見かけますが、それがきっかけで話が弾んで、実際のビジネスにつながるケースが出てくるかもしれません。これからさらにSDGsの考え方を広げるためにも、『SDGsやESGはこうあるべき、こうしなくてはいけない』と考えるよりも、より自由な考え方や受け止め方をしてもいいのではないでしょうか。SDGsは規制ではなく、あくまで世界をよくするための目標です。もっと大きな視点を持って、自分のものにしていくことが大事だと思います」

9/25公開予定・後編「SDGsが生み出す新しいビジネスの種とは?」に続く

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