「アナログ経理」が握る、日本企業の命運 停滞する日本経済を打破するカギがここに?

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かつての手作業からソフトウェア、そしてクラウドサービスへと、経理部門で使用されるシステムはこの数十年で様変わりした。一方、一部の勘定照合や伝票の突合処理は手作業で行う必要があったり、煩雑な承認プロセスが定められていたりと、多くのアナログな作業や慣習が残存しているのも事実である。とくに決算期前に膨れ上がる業務量は、残業時間増大の温床となり働き方改革を邪魔するほか、さまざまな悪影響をもたらしているという。その解決策はないものだろうか。

「アナログ経理」が経営判断の遅れに直結

2001年にアメリカで創業したブラックラインは、経理業務の自動化サービスにいち早くチャレンジした企業。世界150カ国・地域で2800社、約23万人のユーザーに支持されている。今や経理のデジタル化をリードする、クラウドプロバイダーだ。19年8月、同社主催のイベント「InTheBlack Tokyo」が東京・六本木で開催され、多くのビジネスパーソンが詰めかけた。

ブラックライン Founder&CEO
テリース・タッカー

「アナログ決算からの脱却」をテーマに据えた本イベントでは、まず基調講演として同社のテリース・タッカー Founder&CEO(創立者&最高経営責任者)が登壇し、こう述べた。「経理の分野はルールが多く、細かな数字が変わりながらの反復作業がたくさん発生するので、まさに自動化にうってつけ。ビジネスインサイトを得られない定型業務は自動化し、CFO(最高財務責任者)はより創造的で重大な課題に集中するべきです。そうすることで、社内における経理部門への信頼も高まるでしょう。当社の使命はこうした課題を解決する、財務会計の変革にあると自負しています」。

ブラックライン COO
マーク・ハフマン

次に、マーク・ハフマンCOO(最高執行責任者)が登壇し、次のように語った。「日本のビジネスシーンで重要視されている『働き方改革』。当社のテクノロジーと専門知識をフルに活用して、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)、そして働き方改革の実現に貢献していきたいと考えています。業種・業態によらずどんな会社にもある『経理部門』でDXを実現することには大きな意味があります。すべてのことを一瞬でかなえることはできませんから、ステップ・バイ・ステップで進めていきましょう。これまで海外で培ってきたノウハウや専門知識を、日本市場に広めていきたいと考えています。当社の強みに、ぜひご期待ください」。

続いて、日本法人の古濱淑子代表取締役社長が登壇しプレゼンテーションを行った。

ブラックライン 代表取締役社長
古濱 淑子

「CFOは、生産性、スピード、ガバナンスという3つの課題を抱えています。その解決のため、CFOの97%が自動化の必要性を感じている(※1)ものの、実際の進捗は遅い。とくに、決算処理や外部監査の分野ではまだまだ進んでいません。経理現場の課題解決には、考え方と業務プロセスを見直す必要があります。

日本企業の経理部は属人性が高いことに加え、締め処理が終了してから次の処理を始める『直列処理』文化が根強いことが特徴。しかし当社は、締めの時期にかかわらず継続的に経理業務を回す『コンティニュアス・アカウンティング』というコンセプトを提唱しています。これにより決算の早期化が可能となるうえ、経理の見える化、透明性が向上し、ガバナンスが強化されます」と訴えた。

トークセッションには、ブラックラインを活用している企業の事例としてメルカリが登場。リアルな現場体験のエピソード、ブラックライン独自の魅力や具体的な活用方法などについてじっくり語り合った

最後には「令和時代の働き方と脱アナログ化が不可欠な理由」と題し、東京大学名誉教授の伊藤元重氏による特別基調講演が行われた。直近の日本の潜在成長率は0.74%(※2)で、アメリカやイギリスなど先進国と比較してとりわけ低いというデータを引きながら、その解決策を探った。

東京大学 名誉教授
伊藤元重

「潜在成長率は労働投入量と資本投入量、そして生産性によって決まります。日本は少子高齢化や国内需要の低下、生産性の低迷などの要素が相まって、潜在成長率が低くなっている。これはかなり悲惨な状況だと認識しています」(伊藤氏)

※1 出典:一般社団法人日本CFO協会実施 財務マネジメントサーベイ「~平成から令和へ~ 経理財務部門のデジタルトランスフォーメーションに関する実態と課題の調査」実施期間:2019年7月1日~7月19日

※2 出典:日本銀行「需給ギャップと潜在成長率」2019年7月3日掲載

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