「美肌温泉」メカニズム解明のヒント明らかに カギとなるのは細胞の「感覚センサー」

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肌トラブルの多くに炎症が深く関わっている。その炎症反応を抑える成分とは?
肌によいことで知られる大分県・別府八湯の1つ、「明礬(みょうばん)温泉」。2019年5月、その美肌につながるメカニズム解明のヒントが、化粧品メーカー「マンダム」から発表された。それは同社が15年以上研究を続けている、五感とは異なる細胞の感覚センサー「TRP(トリップ)チャネル」が関係するという。トリップチャネルは、2021年にノーベル生理学・医学賞を贈られた「温度・触覚の受容体」の一つで、世界的に注目されている。一体どういうメカニズムなのだろうか。

疲れていたり、精神的なストレスを感じたりすると肌のハリが失われたり、乾燥したり、毛穴が開いたりして肌が荒れる。そういった経験は、誰にでもあるはずだ。

「実は、こうした肌トラブルの多くに、炎症反応が深く関わっています。そして今回、この炎症反応がトリップチャネルの1つである『TRPM4(トリップエムフォー)』の活性化によって抑制できることがわかったのです」と話すのはマンダムの製品保証部 評価分析室の主任・高石雅之氏だ。

発見のカギとなったのは、マンダムが2005年から15年以上にわたって続けているトリップチャネル研究である。トリップチャネルとは、氷やお湯などの温度刺激や、ミントのメントール(清涼感成分)やトウガラシのカプサイシン(辛み成分)などによる化学刺激に反応し、「熱い」「冷たい」「痛い」といった感覚を与える、体中に存在する細胞の感覚センサーだ。

業界初TRPチャネルを応用した感覚刺激の評価法開発

機能と快適の両立を最大化

セルフ販売による化粧品を展開してきたマンダムは、「安全、機能、快適」の3要素をトレードオフにしない製品開発を目指している。安全で機能的であるのはもちろん、快適に使用できることに何よりこだわっているのだ。

そこで開発したのが、業界初となるトリップチャネルを応用した「感覚刺激の評価法」。この評価法を利用して、不快な感覚刺激を起こす成分を把握。不快感を抑える物質を探索することで、快適に使用できる製品の実現に努めている。

例えば、ヘアカラー使用時のピリピリ感を抑制する成分の探索に成功。また目にクレンジングなどが入ってしまったときのツーンとする刺激のメカニズムも明らかにするなど、次々と研究成果を上げている。

もはや夏の定番となった汗拭きシートもしかりだ。あのスーッとする心地よさも、トリップチャネル研究の賜物で、私たちがひんやりとした清涼感を感じるのは、メントールが「TRPM8」と呼ばれる冷感センサーを活性化するからである。

一方で、清涼化粧品に欠かせない成分メントールは、より強い清涼感を得るために多量に配合すると、痛みのセンサーである「TRPA1」まで活性化してヒリヒリとした灼熱感を生む。そこで「TRPM8」の活性を高めるが、「TRPA1」を活性させないようにコントロールすることで、不快な刺激を感じずに快適な清涼感を楽しめるというわけである。

「何百種類もある安全な原料成分の中から『TRPM8』を活性、『TRPA1』を不活性にするものをスクリーニングして探索、12年にユーカリ由来の天然成分であるユーカリプトールを、18年にはにおいの少ないイソボルニルオキシエタノールを見つけ出しました。こうして日夜、新たな成分探索を行っています。

そして細胞試験で確認しながら機能性と快適性のバランスが取れた配合を考え、実際にその処方がわれわれの考えた感覚と一致するのか、まずは研究員たちが実際に体感。それぞれの感覚をすり合わせ、議論を重ねて処方を微調整した後、モニターによる使用実験を何度も行ったうえで、最終商品に仕上げます」(高石氏)

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