アジア太平洋の安全保障は、アメリカ中心のままでいいのか?
実は、ピラミッド型では?
「ハブ・アンド・スポーク」は、すべての同盟国が一緒に動く時に稼動します。
しかしながら、私は、わが国の周辺に緊急事態が生じた時に日米安全保障だけしか動かない可能性は高いと見ています。そして、「部分的にしか動かない時(例えば日米安保だけ発動する場合)は、現在のアジア太平洋の安全保障システムは、ハブ・アンド・スポークというよりも、ピラミッドシステム」となります。わが国における安全保障の議論を見ていると、「日本がアメリカのピラミッドにおける下位構造(下図参照)」にあることを問題としているように見えます。 そうした議論の代表例が以下の2つです。
「わが国がアメリカの下層にあることはけしからん!日本は自衛隊を自衛軍として米軍から独立して独力で国防を行えるようにすべき」
「自衛隊を自衛軍にすると米軍の支配下になり、米軍のために活動しなければならなくなるからだめだ」
一見、この2つの論調は正しいようにみえますが。私は、両方とも間違っていると考えています。
「米軍からの独立」については2つの事実を見逃しています。
一つ目が、「現在の自衛隊の主要な兵器システム(例:イージス艦、戦闘機など)のほとんどが米国から提供されたものであり、指揮命令システムの大きな部分が米軍に組み込まれているという事実。2つ目が、「わが国はアメリカの核の傘の下に未だに入っている」という事実です。この2つの事実を踏まえると、アメリカの安全保障からわが国が抜け出すことは現状では不可能だと考えます。
そして、「自衛軍になるとアメリカの配下となり、米国が望むままに海外への派遣を行わなければならない」という議論も必ずしも正しいとは言えません。日本は、自衛軍によってアメリカに貢献するのでなく、非軍備面でアメリカをサポートすることにより補完関係を構築できると考えます。たとえば、アメリカが提唱する拡散安全保障イニシアティブ(PSI:ブッシュ大統領が2003年に発表した「大量破壊兵器、その運搬手段および関連物資の陸上・海上・航空輸送が、拡散懸念国との間で行われることを防止する活動を強化し拡大する活動計画」。詳細はこちら)に全面的に協力し、核兵器や化学生物兵器の拡散防止にわが国が最大限の貢献を行えば、アメリカも日本の貢献を認めるはずです。また、わが国が提唱する「人間の安全保障」の概念に基づき、テロの防止のために様々な医療・教育といった支援をアメリカと連携して行うことをもっと進めるべきだと考えます。
わが国は、韓国やフィリピンといったアジア諸国において、未だ「日本の再軍国化への懸念」があることは理解しなければならないと思っています。アメリカとの関係を構築するとともに、同じスポークに位置する韓国、フィリピン、オーストラリア・ニュージーランドの懸念を払拭した上での活動を行う必要があります。