グローバルな誘致進む「MICE」戦略の今 多くの企業が報奨旅行やミーティングで利用

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MICE誘致が今、日本国内で活発化している。各都市間での競争も大きな高まりを見せ、実施件数も年々増加傾向にある。日本のMICE開催地としての特徴や魅力とは何か。今後MICEを数多く誘致するために必要なこととは。MICE国際競争力強化委員会で委員長を務める東京大学名誉教授で現在、神戸芸術工科大学教授の西村幸夫氏に話を聞いた。

各地域の固有の文化が、MICE誘致の大きなカギ

――日本のMICE誘致の取り組み状況をお聞かせください。

神戸芸術工科大学
教授
西村 幸夫氏
1952年福岡生まれ。東京大学工学部卒、同大学院修了後、同研究科教授、同大学副学長、同大学先端科学技術研究センター所長を経て、現職。専門は都市計画、都市保全計画、都市景観計画、市民主体のまちづくり。著書に『西村幸夫 文化・観光論ノート』『まちを想う』(鹿島出版会)『都市保全計画』(東京大学出版会)など。

西村 MICE(Meeting, Incentive Tour, Convention, Exhibition)は観光産業の中でも経済波及効果などの大きい重要なセクターとして認識されており、現在国内では主要12都市を「グローバルMICE都市」として、誘致力向上のための支援事業や各地域の連携強化が行われています。近年はConventionに加え、Exhibition開催の需要も高まってきており、MICE全体で開催件数が多くなってきています。

――MICEが国の経済や雇用にもたらす効果も大きくなってきているのでしょうか。

西村 観光庁の2017年度「MICEの経済波及効果算出等事業」調査によると、16年開催分のMICEの雇用効果は約9万6000人、誘発税収額は約820億円、全体の経済波及効果は約1兆590億円と、非常に大きなものになっています。利用者はビジネスパーソンが中心。仕事の合間にプライベートで観光も楽しむため、実は通常のインバウンドよりも消費額は高くなっています。実績で言えば現在、日本は世界7位。アジア地域ではトップの地位にあります。

――MICEのメリットとは何なのでしょうか。

西村 まず企業側にとっては人的ネットワークを広げたり、情報交換したりすることで、結果としてイノベーションにつながるというメリットがあるでしょう。一方、主催者側にとっては大きな経済波及効果に加え、都市としてのネームバリューが上がるという効果もあります。実績を積み重ねれば会議開催のノウハウも蓄積される。しかし今、MICE誘致は都市間競争も激しくなってきています。

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