
主催:東洋経済新報社
協力:Dropbox Japan
オープニング
生産性を高める働き方改革
2000人の調査結果から見えてきた、「生産性」と「情報共有」の深い関係
代表取締役社長
五十嵐 光喜氏
企業のコラボレーションプラットフォームを提供するドロップボックスの五十嵐光喜氏は、労働時間を短縮すれば、売上高減少が懸念されることから、アウトプット(売上高)÷インプット(労働量)で計算される「生産性」の向上が必要になると指摘した。働き方改革関連法の施行から1カ月となる5月に同社などが2000人を対象に実施した調査では、長時間労働に対する取り組みで成果を出しているという回答が5割超の割合なのに対し、生産性向上の成果は4割に満たないという結果を提示。生産性向上に成果を出しているところは、勤務形態・時間の多様化以外に、ITシステム導入による作業効率化をはじめ幅広い取り組みをしている傾向があると分析。「本来の仕事以外の無駄な作業時間の効率化がカギになる」と結論した。
基調講演(問題提起)
残業学:残業はなぜ生まれるのか?どのようにして減らせばいいのか?
経営学部
教授
中原 淳氏
長時間労働についてパーソル総合研究所との共同研究を行った立教大学の中原淳氏は、残業発生の3つのメカニズムから説明した。1つ目が「感染」。みんな、本心では早く帰りたいのに、周囲から「トンデモナイ」と思われないか不安で口に出せず、誰も望まない同調圧力が生まれ、帰りにくさが感染。上司の朝令暮改やマイクロマネジメントによる仕事量増加でさらに感染が拡大する、とした。2つ目が「遺伝」。上司が無意識に自分が若い頃の働き方を押し付け、世代や組織をまたいで残業が受け継がれる。そして3つ目が「マヒ」。残業が月60時間を超えると、ランナーズハイならぬ「ザンギョーズハイ」というべきマヒ状態になり、社員の主観的幸福感は微増する。ただし、健康・休職リスクが増大し、社員の能力開発も阻害する。
残業削減の方策は、「時間を意識せずに働いてしまう」社員に、出退勤管理の徹底やPCシャットダウンなど、時間の境界を強制的につくる「外科手術」。上司に対するフィードバック強化でマネジメントスキルを向上させる「体力増進」。残業を生む職場の体質を組織開発の手法で改善する「漢方治療」の3つを提示。
組織開発は、長時間労働の背景にある、役割分担の非効率、特定の人に属人的業務が集中する、といった組織の真の問題を「可視化」。関係者が真剣に問題を議論する「ガチ対話」を通じて、今後どうするかを決める「未来づくり」――の3ステップで行う。「データは、まず長所から提示し、それを持続可能にするために何をすべきか、というロジックにするのがコツ」で、犯人捜しではなく、建設的対話を促すことがポイント。「残業は個人の時短、仕事術で是正できるという個人責任論が根強いが、職場、上司の問題が大きい。組織ぐるみの解決が必要」と訴えた。
課題解決&事例講演
生産性を高める”情報共有革命”の実践事例
組織として取り組まれた”生産性向上”のための働き方改革
インダストリー
リーダー
戸田 麻弥氏
インダストリー
エバンジェリスト
李 苑氏
ドロップボックスなどが実施した調査では、1日の平均労働時間534分(約8.9時間)で、平均190分が本来の仕事以外に費やされており、うち約158分が情報共有にかかっているとのこと。戸田麻弥氏は、同社の情報共有サービスを使えば「情報共有の無駄な時間の6割以上を減らせる」と話す。そこから生み出される、1カ月で約40時間を顧客接点などに充てることで、事業成長機会も広げられると指摘。
その後、企業向けコラボレーションプラットフォーム「Dropbox Business」を使って李苑氏と行った、設計図を外注するシーンのデモ。若手社員が先輩社員に尋ねなくても、検索機能を使って、テンプレートをすぐに見つけ、外注先と共有。ファイルリクエスト機能で指定したフォルダーに設計図ファイルを入れてもらい、届いたファイルを開いた画面のわきにあるコメント欄を使いながら、チャットの要領で修正点をやり取りする一連の流れを示した。複数名での共同作業に最適なワークスペース「Dropbox Paper」では、メンバー間で企画書や設計プロトタイプをペーパーレスで共有し、コメントをやり取りできる。これらの利用で、社内に点在する資料探し、共有資料の印刷や配布、情報共有だけを目的とするような会議と、そのスケジュール調整や移動の時間を削減。フォルダーごとのアクセス権限の設定により、幹部、一般社員、外部に分けたコンテンツ管理も自在で、重要なファイルの保管先としても安心だ。約4倍もの費用対効果と試算しているユーザーの建設会社に言及した戸田氏は「時間を上手に使い、成長につなげていただきたい」とアピールした。
特別講演
人生100年時代に考える「働き方改革」の本質とは?
経営研究科
研究科長
田久保 善彦氏
グロービス経営大学院の田久保善彦氏は「働き方改革と生産性向上には、学び方改革、生き方改革が必要になる」と語った。生産性(=アウトプット÷インプット)向上には、導入されたITツールを使いこなす力も含め、アウトプットを増やす能力が重要。とくに、環境変化の激しい今は「個人が進んで自己の能力を開発し、会社はそれを支援すべき」と指摘し、残業削減で生まれる余剰時間を能力開発に振り向けることを求めた。グロービスは、実践的な能力開発の場、多彩な業種・立場の多様なアイデアを持つ仲間とのネットワーク構築の場の役割を担うが、「高めた能力を向ける先を定めて何かを実現しようという『志』の醸成が最も大切」と強調する。長く働き続ける人生100年時代は、働き方を支える学び方も変わる。そのことを念頭に「まず今後5年の時間の使い方を考えてほしい」と訴えた。また「アンケート調査からグロービスに通う社会人学生は、インパクトの大きい課題の解決力の向上に加え、仕事と学びを両立させるために、時間の使い方がうまくなり、家庭や趣味も充実させている」と、働きながら学ぶことへの不安を払拭し、自らの能力開発に踏み出すよう促した。