やみくもな「脱プラスチック」が見当違いなワケ G20でも争点となった「プラごみ」問題

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こうした数字は、1997年に施行された容器包装リサイクル法や、政府・自治体、業界、民間の継続的な取り組みが結実したものといえる。いずれにせよ日本では、ペットボトルの「高度な資源循環スキーム」が確立されているのだ。ただ、実質的な回収率が約98%ということは、残りの2%ほどは海や川など自然環境に流出しているとも考えられ、改善すべき点は依然として残っている。

こうした現状を踏まえ、ペットボトルの循環利用をさらに加速させようと意欲的に取り組んでいるのが、日本コカ・コーラと全国5社のボトリング会社らで構成されるコカ・コーラシステムだ。

世界初の「完全循環型」ペットボトル製品

まずコカ・コーラシステムには、ベースとなる大きな活動目標がある。それが、ザ コカ・コーラ カンパニー(米本社)が2018年1月に打ち出したグローバルプランだ。そこでは「World Without Waste(廃棄物ゼロ社会)」を実現するために、「2030年までに、世界のコカ・コーラシステムが販売する製品と同等量の容器を100%回収し、すべてリサイクルする」という、清涼飲料業界でも初となる高度な具体目標が策定されている。

それに基づいて日本のコカ・コーラシステムも18年1月に「容器の2030年ビジョン」を発表。「設計」「回収」「パートナー」を3つの柱とする具体的な行動目標を定めた。さらには19年7月12日、その内容をよりアグレッシブにした、改訂版「容器の2030年ビジョン」を日本国内における新たな環境目標として発表※4。主な内容を抜粋する。

・2025年までに、日本国内で販売するすべての製品にリサイクル可能な容器を採用する。
・2030年には「ボトルtoボトル※5」の割合を90%にまで高める。また、サスティナブル素材※6の割合を100%とすることで、新たな化石燃料を使用しない容器の完全導入を目指す。
・2030年までに、日本国内で販売した自社製品と同等量のペットボトルを回収する。

実はコカ・コーラシステムは19年6月に、こうした目標に先鞭をつける画期的な取り組みを日本国内で始めている。店頭で回収したペットボトルを100%使用した「一(はじめ)緑茶 一日一本」という商品のリニューアル発売だ。これはセブン&アイ・ホールディングスとの共同企画である同商品の使用済みペットボトルをセブン&アイグループの店頭で回収し、それをリサイクルし再び製品化するというもの。ペットボトルを世界で初めて※7「完全循環」させるという未来的なプロジェクトだ。

日本コカ・コーラ代表取締役社長ホルヘ・ガルドゥニョ氏は以下のようにコメントしている。

「『一緑茶 一日一本』は、すでに日本社会に優れたプラスチック資源循環スキームが根付いているからこそ実現できた、世界で初めての取り組みです。『廃棄物ゼロ社会』実現に向けた日本のコカ・コーラシステムの取り組みは、プラスチック資源の循環利用のモデルケースとして、世界に示すべき先進的なものであると確信しています。当社は今後も、飲料業界におけるリーダーシップを発揮していけるよう、さまざまな取り組みに挑戦していきたいと考えています」

ペットボトルはほかのプラスチックごみなどに比べると、リサイクルがしやすいうえに多くの機能的メリットも備える。再栓ができる。軽量のため携帯がしやすく、輸送時にCO2排出などの環境負荷がかかりにくい。割れにくい、衛生的といった点だ。

素材そのものを「廃止」するというアプローチはわかりやすいが、ことペットボトルに関しては、その素材の利便性を考えると、なかなか現実的ではないだろう。メリットをしっかり享受しつつ、「ボトルtoボトル」で着実に100%リサイクルを実現し“循環の輪”をがっちり閉じることで、廃棄ペットボトルを海洋や河川に一切流出させない。そんな合理的かつ夢のある世界を、日本コカ・コーラは2030年までに本気で実現しようとしている。そうした「人と環境の双方に優しい」世界こそが、真のサスティナブルなのではないだろうか。

※4 出典:「日本コカ・コーラ サスティナビリティーレポート 2019」https://www.cocacola.co.jp/sustainability

※5 使用済みペットボトルを回収・リサイクル処理したうえで、ペットボトルとして再生し、飲料の容器として用いること。2018年は約17%

※6 リサイクルPET樹脂または植物由来PET樹脂

※7 2019年6月5日時点。日本コカ・コーラおよびセブン&アイ・ホールディングス調べ