経営を牽引する人事の役割 SAP HR Connect 2019
お客様講演2
マイナビが挑む、適時適材適所の
実現に向けた人材・組織開発
2年半前に営業から戦略人事部門に転じ、この5年で社員数が3倍超の約1万人に急拡大したマイナビの人事改革を進めてきた上澤田真吾氏は、その手探りの取り組みを振り返った。まず、事業部間異動を活性化するため、異動希望の書かれた、数千件の自己申告書を読むことからスタート。上司が見るため、本音を書きにくかった異動希望の項目を人事部直送とするなど情報の信憑性を高め、19年春から稼働したタレントマネジメントシステムで、情報の見える化を実現した。また、社員自ら希望をかなえる道をつくるため、社内公募制を導入。各部の人材流出懸念を抑えるため、各事業部1人枠でスモールスタートしてから拡大した。「人事施策は総論賛成、各論反対になりやすい。全体最適視点で小さく始めることがポイント」と話す。さらに他社事例を学んで給与評価制度の改定にも着手。「人事の専門性を高め、現場にアウトプットして、事業に貢献していきたい」と語った。
SAP講演
人事戦略の迅速な遂行を支える
最先端HRテクノロジー
SAPの篠原加奈子氏は、日本企業にイノベーションを起こすためには、テクノロジーを駆使した「人事の個別化」が必要と強調、「SAP SuccessFactors」の機能のデモを披露した。プロジェクトチーム編成では、AIが、ポテンシャル人材から、経験が最も多様で、相性のよい組み合わせを提示。活動中はメンバーの状態をサーベイなどでつねに把握し、エンゲージメントを高める手を打てる。また、社員のキャリア志向や特性などを網羅した面談のためのダッシュボードを活用して、社内で目指せるキャリアを示すことで、可能性を引き出し、離職を避ける。こうした個別化にシフトするため、既存業務は、異動シミュレーションなどの機能を使って効率化できる。「テクノロジーで経営に貢献する人事の変革を支えていきたい」と語った。
お客様講演3
味の素のグローバル人事戦略と人財育成
~Global HR Transformation~
味の素の髙倉千春氏は、グローバル化が進む同社の経営基盤強化に向けたグローバル人事改革について語った。海外売り上げが5割を超えている同社は、自社製品をその国の文化、社会変化に適応させる必要があり、外国人従業員が約3分の2を占めるなど人材多様化も進んだ。そこで、食と健康という社会的価値創出と、会社の経済的価値の追求を両立させる「味の素グループ・シェアード・バリュー(ASV)」を軸に組織の求心力を向上。さらに事業環境の急速な変化に対応するため、人を起点に適したポジションを考える「適材適所」から、将来の成長戦略を踏まえたポジションの職務要件を明示して適切な人材を充てる「適所適財」の人事に転換。全社戦略の視点からポジションの職務要件は将来変わることも見越して、次世代の採用、育成を推進する。また、グローバル規模で多様な人財を把握するHRテクノロジーも活用。「今後も、将来の人事のあり方を考えていきたい」と述べた。
クロージング
クロージングでSAPの南和気氏は、登壇した各社はいずれも「人事部が自ら存在意義を再定義している」と振り返り、「従業員と会社をつなぐ組織エンゲージメントを、従業員サーベイで分析、対策を講じることがカギ」とまとめた。SAPは情報面で、改革を支援できることをアピールし「皆さんと一緒に変革の時代を歩ませてほしい」と訴えた。