解消すべきは安易な「残業依存体質」 人材獲得やマネジメントに必要不可欠なもの

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――本来の働き方改革を実現するためには、何が必要なのでしょうか。

佐藤 大きくは2つあります。1つは、働き方改革は社員一人ひとりの人生の豊かさにつながるものだという認識を浸透させること。

もう1つは、残業時間が減って残業代が少なくなった分を、新たなインセンティブとして社員に還元したり、教育訓練機会の充実などに活用したりするなど、社員の誤解を解消することです。そのためにも、現場のリーダーである管理職が、働き方改革の主旨を理解したうえできちんと部下たちに説明し、時間意識の高い働き方への転換を支援する必要があります。

もちろん、今のビジネスモデルや仕事の現状を前提にしていては、生産性向上のみで解決はできません。管理職は生産性向上だけではなく、業務削減や仕事の仕方の見直しを同時に行わなければなりません。ただ、それにはトップの決断も必要になってきます。

例えば、福岡県に本社を置く、建設現場の足場のリースなどを行っている中堅企業は、有休取得率100%で、残業時間はなんと年間平均2時間です。それは、日曜日に足場の搬入を求めるような企業からの注文は受けず、取引先を分散し、社内では多能工化を促進するなど、ビジネスモデルや仕事の改革をトップが断行したから実現できたのです。結果、その企業は他社が人手不足で苦しむ中、優秀な人材を確保し、競争力の高い会社に生まれ変わりました。

働き方改革には、トップや管理職の意識改革が非常に重要になってくるのです。

――デジタル化の進展で、ITツールの活用が広がっています。

佐藤 業務内容の見直しや、場所に縛られない多様な働き方を進めるうえでも、ITツールの活用は効果的だと思います。また、社員の働き方だけではなく、価値観やキャリア志向の多様化などから、人事部門は従来のような従業員の一律管理が難しくなっています。さまざまな人材の多様な能力や個性を生かしつつ、効率的に管理をしていくためには、人材活用の面でもITツールの活用が必要不可欠になっていくでしょう。

これからの時代に求められる変化に対応できる能力とは?

――これからのビジネスパーソンには何が求められているのでしょうか。

佐藤 働き方改革は、「生活改革」でもあります。例えば、首都圏では通勤時間は平均往復2時間強、所定労働時間が8時間で残業を1時間した場合、平日には自分の時間を確保することができません。しかし、残業削減に加えて、定時退社日と残業をまとめてする日を組み合わせるなど、メリハリのある働き方を実現することで平日にも自分のための自由時間をつくれれば、子育てや介護、自分のキャリアアップのための学びなどに振り向けることができます。つまり、働き方改革によって、どのような生活を実現したいのかが、一人ひとりに問われているということです。

これから働く人に何が求められているのか。それは「変化対応行動」だと考えています。企業で働いていれば、いま自分に必要なスキルはわかります。しかし、10年後、今とは違うということは何となくわかっていても、実際にどのような仕事が生まれ、どのようなスキルが必要になるのかは誰にもわからないはずです。だからこそ、変化に対応できる能力が重要になってくるのです。

そんなときに求められるのが、「知的好奇心」と「チャレンジ力」、そして「学習習慣」です。つねに世の動きにアンテナを張って、どんな状況でも立ち向かうことを恐れずに、学び続けていく。そうした姿勢を持っていれば、どのような未来であったとしても、生き残っていくことができるでしょう。