RPA導入2年で約1000人分の余力捻出事例も 現場が喜ぶ「失敗しないRPA導入」方法とは?
一方、日本通運でも18年4月より社員2名でRPA導入をスタート。こちらも現在は20名のプロジェクトスタッフを抱え、全社規模の取り組みへと成長させた。スケールアップのポイントを井上恵太氏は、「具体的な数値目標が重要であり、当社では、40万時間削減の目標を社内に示しました。これにより、RPA化を望む応募は約400案件あり、その中でも効果の高そうな案件を3割程度に絞り込み実施しました」と語る。また2社で共通していたのは「ロボットを仮想労働者と定義し、人のフォローアップ体制を組むこと」。そのうえで、「失敗を恐れないチャレンジ」が重要であるとした。
現場が輝くRPAプロジェクト
RPA導入にあたり社内浸透も重要な点だ。ダイハツ工業では、「現場主義による働き方改革」を推進。19年7月から全社展開を実施する。同社の栗山利彦氏は「『業務改革』よりも、『面倒な業務を減らそう』というメッセージを徹底させること」で現場のモチベーションを高めたという。さらに、独自のeラーニング教材をそろえることで、「誰もが使えるロボット」を標榜する教育体制を整備。禁止項目などのルールもA4サイズ1枚程度とシンプルに努めた。またユーザー会を設定し、ユーザー間の情報共有の促進などもサポートしている。
理化学機器総合商社であるアズワンでも、18年1月からPoC(概念実証)を実施し、同年8月からは現場部門での開発をスタートさせている。同社の福田智宏氏によれば、入社1年目の文系スタッフがデモでロボットを作成。誰でもつくれることを印象づけると同時に、テンプレート作成などにも注力した。また、RPA活用プロジェクトの参加は、参加者のモチベーションを損なわないために、強制することなく自ら手を挙げた社員にのみ限定しているという。両社共通して、RPAをつくる環境は、限定した実機にとどめず、社外からでもいつでも使えるクラウドやシンクライアント環境にしたことで、稼働率が向上したという。
トヨタが進める事務職の「カイゼン」
効率化に関して、世界に「カイゼン」の日本語を浸透させたトヨタ自動車も事務職業務の大規模なRPA導入を進めている。同社の岩瀬正樹氏は、工場の「カイゼン」と比べホワイトカラーの効率化は遅れているとし「RPAはホワイトカラーの生産性向上に直結するツール」とした。
同社では17年段階でPoCを終えていたが、18年4月までルールづくりに時間を割いている。現場からは早くスタートを望む声も上がっていたが開発・運用ルールすらも「カイゼン」のステップを踏み洗練を目指した。そのため、開発スタートからは手戻りが最小化された印象だ。
18年4月からまずはIT部門でのRPA開発をスタートさせ、19年1月からは一般の現場職員にも開発を解禁した。
一方、教育体制にも力を入れている。業務改廃を推進する部門と協力体制を取りながらカリキュラムを設定。結果、アンケートでは、78%が「RPAにより業務改廃が進んだ」、66%が「モチベーションが向上した」という結果だったという。
このように、日本企業でも先進的なRPA活用が進んでいる。UiPathでは、クラウド版の管理ツールの日本語製品のリリースを今後予定するなど、真の「働き方改革」をサポートしていく。