お客様の「体験」という付加価値を届ける Eコマース カンファレンス 2019

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デジタル企業を中心とするEコマース(EC)市場の成長により、小売業界は大きな変革の波にさらされている。日本のEC市場規模はBtoCだけでも約18兆円(2018年)*で、前年比約9%増と急速に拡大しており、既存小売業もEC、オムニチャネル化を加速している。19年5月、東京・大阪・名古屋の3会場で開かれた「Eコマースカンファレンス2019 お客様の『購買意欲』をくすぐり、『体験』という付加価値を届ける」には、企業のEC事業部門などから計約600人が参加。スピードの必要性、進化するテクノロジーへの対応、顧客ロイヤルティー戦略など、ECを推進するうえで必要な課題について検討した。
主催:東洋経済新報社
共催:セールスフォース・ドットコム

*経済産業省「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」

基調講演(Eコマースのトレンド)
最新の事例から見るECの課題とは?
ファンとの絆を深め、売上・利益の最大化を狙う

一般社団法人ジャパンEコマース
コンサルタント協会(JECCICA)
代表理事
川連 一豊

JECCICAの川連一豊氏は、EC事業を上手に進めるうえで、留意すべき課題を説明した。5G高速通信などテクノロジーについては、評価ツールを使ってサイトのパフォーマンス改善を重ねることを推奨。「アクセスの遅さは売り上げに影響するので、インフラのスピードを意識すべき」と求めた。また「ECでは顧客との関係性構築が何よりも大事」と強調。「信頼する人に勧められることが購入の決め手になる」と、商品よりも店長らを前面に出すことで、人による差別化を進め、SNSのインフルエンサーも活用しながら「コミュニティーを作ってファンを増やすことが重要」と述べた。そのためには、顧客データを取得する仕組みを作り、そのデータを活用して、カスタマージャーニーの5A(認知、訴求、調査、行動、推奨)に沿った「お客様の心をデザインする」施策を促した。

課題解決セッション【テーマ(1)】
ECサイトの「コスト削減」と「施策のスピード化」を実現する方法とは?
~SaaS型のECプラットフォームがECビジネスにもたらすメリットを解説~

セールスフォース・ドットコム
Commerce Cloud
シニアソリューションエンジニア
山浦 直人

セールスフォース・ドットコムの山浦直人氏は、つねに最新のシステムが利用可能で、インフラの維持管理業務を省力化、サイトを安定稼働できる、同社の「コマースクラウド」をはじめとするSaaSのメリットを訴えた。同社はシステム利用企業のカート投入率などを公開し、ベンチマーク企業と比較できるエコシステムを構築。これらのデータを基に、カスタマー・サクセス・マネジャーが、顧客の課題発見を促し、改善策の相談にも応じることで、成果を上げてきたことを紹介。「すぐにできる効果的な施策」として、モバイル端末に注力することを推奨して、リコメンドをページ中段に表示するといった、改善ポイントに言及。「サイトの利便性、操作性を少し高めるだけで売り上げは大きく変わる」と語った。

課題解決セッション【テーマ(2)】
成功する、「ECビジネスモデル」と「顧客ロイヤルティ戦略」とは?
~AIと統合CRMで実現する、顧客との新しいつながりとオムニチャネル対策~

セールスフォース・ドットコム
エバンジェリスト/プリンシパル
ビジネスコンサルタント
熊村 剛輔

セールスフォース・ドットコムの熊村剛輔氏は、米国ECの最新トレンドを紹介した。11月下旬から約1カ月のホリデーシーズンセールは前倒し化・長期化が進み、8月ごろからクリスマスまで約5カ月に及んでいると指摘。事業者側も、短期集中から、時間をかけて売り上げを最大化する方向にシフトし、商品の認知・関心・検討・購買という通常のカスタマージャーニーに加え、購買後の使用・顧客活性化・顧客満足度向上・顧客エンゲージメント向上のサイクルから、別の商品認知につなげる「統合された顧客との結びつき(ユニファイドエンゲージメント)が注目されている」と説明した。その実現には、モバイルアクセスの質を高め、データを使ってパーソナライズされたアプローチによる顧客体験の向上が重要で、同社もAIなどを使った支援ができることをアピールした。

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