製薬大手「AI創薬で不可能が可能に!」の真相 第一三共RDノバーレ「製薬は今やIT産業だ」
福岡 この階層型ストレージ・システムは研究機関や医療機関に限らず、全産業分野で採用されています。近年データ量が増加している自動車業界もその1つ。自動運転技術の開発過程で膨大な画像データが生成されるのですが、これを安全に保管し活用するために、同様のソリューションが役立てられています。
小野 自動運転は、新たな事業開発の好例ですね。当社として、今後期待しているのは「AI創薬」です。ゲノムデータを単独で解析しても創薬につながるような解釈をすることは難しいのですが、病歴や投薬歴といったほかのデータとつなげることで見えてくるものがあります。しかし、これを実践すると調査項目もデータ量も増加し、人間が解釈可能な量を超えてしまうという課題も生じている。
そこでAIを使って、人間にはできない高速なデータ解釈を行い、創薬に生かすという方向になってきています。今や「製薬産業は情報産業化しつつある」といっても過言ではありません。ビッグデータとAIをシームレスにつないで解析し、人間には見つけられなかった洞察を得ようと、業界全体が取り組んでいます。
高度なIT人材とパートナーの有無が、競争優位に直結
福岡 そのビッグデータとAIのソリューションについては、われわれもまさに今注力している分野です。非構造化データを効率的に管理、分類し、大規模な分析と洞察の獲得を支援したり、AIをストレージの運用管理に活用して負荷を軽減したりするソフトウェアを提供しています。
小野 ハードウェアだけでなく、ソフトウェアにも力を入れていますね。
福岡 はい。そしてもう1つの分野が、「ハイブリッド/マルチクラウド」環境の構築です。今、複数のクラウドを活用する「マルチクラウド」とともに、それらとオンプレミスを連携させる「ハイブリッド/マルチクラウド」環境の構築が課題になっています。当社は両者の垣根をなくすため、ソフトウェアも含めたソリューションの提供に注力しています。
小野 製薬会社では、単なる業務用ITシステムの枠を超えた、ハイパフォーマンスコンピューティング環境の構築が必須になっています。そして何より必要なのは、これを実現できるIT人材と、全体を見て支援してくれる外部のパートナーです。この両者を獲得できなければ、激化する競争に勝つことはできないでしょう。
福岡 企業の競争力の源泉は、今やデータにあります。お客様のパートナーとして大容量データをフルに活用するインフラやサービスを提供していくのが当社の使命。どんどんサービスとテクノロジーをブラッシュアップして、この使命を全うしていきたいと考えています。
※職掌そのほか、2019年6月取材時の内容です