製薬大手「AI創薬で不可能が可能に!」の真相 第一三共RDノバーレ「製薬は今やIT産業だ」

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データを生かしたイノベーションや新事業の創出は、いま多くの企業にとって課題となっている。ゲノムデータを取り扱う創薬業界も例に漏れず、中でも第一三共グループで医薬品の研究・開発の一部を行う第一三共RDノバーレは、ビッグデータの管理・運用に成功して話題を呼んでいる。同社の小野祥正氏と、日本アイ・ビー・エム(以下、IBM)でストレージ・システムを手がける福岡英治氏に、その実態を聞いた。

ゲノム解読で飛躍的に増大したデータ量

福岡 今、企業が取り扱うデータの量が爆発的に増加しています。以前はそれをどう効率的に取捨選択するかという発想がメインでしたが、現在は、ビッグデータこそがイノベーションを起こして競争優位性を獲得するための源泉であるという認識に変わってきた。大量のデータを安全かつ効果的に活用できるインフラの重要性が高まっています。

第一三共RDノバーレ
トランスレーショナル研究部 主任研究員
小野 祥正

小野 製薬業界の研究開発も、まさに日進月歩。ゲノムデータによって、一人ひとりのDNAを網羅的に調べられる時代となりました。「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を2025年ビジョンに掲げる当グループは、約5年前にゲノム配列を高速で読み出す装置を導入しました。すると、27時間ごとにおよそ5テラバイトものデータが生成されるようになり、膨大なデータ量を扱う必要性が生まれたのです。

福岡 過去になかったような処理量・処理速度が必要となったわけですね。それに堪えうるインフラとして、当社のシステムを導入していただきました。

日本アイ・ビー・エム 
理事 システム事業本部
ストレージ・システム事業部 事業部長
福岡 英治

小野 はい。どんな環境が当社に最適なのか知るべく、IBMのワークショップに参加したところ、ストレージとテープからなるデータ基盤「階層型ストレージ・システム」がまさに私の描いていた理想に近いことが判明しました。ゲノム解析を手がけている世界中の研究機関でも採用されていると聞き、サーバー「IBM Power Systems」と併せて、採用に至りました。

導入に際しては、ビジネス課題をIBMに把握してもらい、それに沿った的確な構成を提案してもらいました。システム構築期間は約2カ月と、とても迅速でした。2017年12月に運用を開始、18年は適宜拡張しながら使用してきたというのがこれまでの経緯です。

福岡 「階層型ストレージ・システム」では、ストレージにテープという比較的安価なソリューションを組み合わせることで、階層型の構成を実現しました。高速性と柔軟性に加え、データ量が増加しても対応できる拡張性が特長です。将来にわたって、長く使用できます。使用されてみての効果はいかがでしょうか。

投入されたデータは、ストレージ・システムや大容量のテープドライブに置かれる。ユーザーは、そのありかを気にすることなくスムーズに使用できる

小野 とても快適です。何より、データの保存場所とストレージの空き容量を意識することなく使えるメリットが大きいですね。以前はストレージの容量が限られていましたから、自分たちで処理量を計算し、手作業でバックアップを取って、必要な空き容量を確保しなければなりませんでした。それが自動化され、無駄な手間が省けました。

また、ハイレベルなセキュリティーも魅力です。暗号化機能と監査ログ機能、データが壊れても自動検知し修復するデータ保護機能が備わっていますから、堅牢なインフラとして安心して使用できます。

福岡 製薬業界では、患者のゲノムデータという非常に高度な機密情報を取り扱いますよね。堅牢なセキュリティーはとくに当社の誇るところですから、相性がいいと思います。

小野 はい。臨床試験で得たゲノムデータをすべて暗号化して保護できます。また、スピードも向上しました。読み込み・書き出しの処理速度は体感で10倍以上になったと思います。

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