規制対応のテクノロジーとエコシステムの潮流 RegTechが注目される本当の理由とは?

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Case Session2
先端テクノロジーにより進化する監査

有限責任 あずさ監査法人
次世代監査技術研究室長
小川 勤氏

あずさ監査法人の小川勤氏は、未来の監査を支える先端テクノロジーに取り組む次世代監査技術研究室の活動を紹介した。現代の企業は、膨大な取引を行っているため、会計監査をすべて手作業で精査するのは不可能である。そこで、通常はサンプルテストを行う。

しかし、テクノロジーを駆使すれば、すべての取引データを分析することができる。そうなれば、対象がサンプルに入っていなかったために起きる不正の見逃しをなくすことも可能となる。「将来は、リアルタイムでデータを分析し、不正を発見する常時監査を目指す」と、小川氏は言う。

同研究室の成果として、グループ会社のさまざまな指標をデータサイエンスで可視化し、異常値を示す指標から危険な兆候を示す「子会社スコアリング」、受注から承認、出荷、売り上げ計上と、たどるはずの取引業務過程から逸脱した業務実態を可視化する「プロセスマイニング」などのシステムを紹介。「会計基準に従うだけの監査では形式的な対応に陥る。不正を見つけるという本質に目を向けることが大事」と語った。

パネルディスカッション
RegTechがもたらす「戦略的優位」と「付加価値」について(実務目線の議論)

モデレーター:
KPMGコンサルティング
フィンテック推進支援室 室長
ディレクター
東海林 正賢氏

最後に、KPMGコンサルティングの東海林正賢氏をモデレーターに、4人の講演者が規制のあり方や対応の仕方について議論した。

内閣官房の萩原氏は、技術進歩や経済の変化に合わせて規制をファインチューニングし、アップデートしていくスマートレギュレーションの考え方を提示。「現行の規制を順守することはもちろん重要」としつつ、「民間ビジネスを担う皆様は、顧客やマーケット、経済や新技術の変化を理解していると思う。イノベーティブな事業の企画に加えて、技術の発展や経済の変化を踏まえた規制の見直しについても考えていただき、官民で対話していくことが大切ではないか」と述べた。

じぶん銀行の酒井氏は「規制関連の法令を網羅的に理解していないと、ビジネスの新しい提案があったときに対応できない」と、規制対応の難しさに言及。個人情報を扱う本人確認や、スマートフォンからの送金など、各行で共通に必要なインフラは共同化が望ましいと語った。

あずさ監査法人の山﨑氏は、顧客データは想定しない利用をされるリスクもあるが、不正検知のためには活用推進も求められる。また、プリンシプルベースの規制はグレーゾーンがあるが、ルールベースも悪用者に裏をかかれる恐れがあると指摘して「健全な検証が大切」と訴えた。

同法人の小川氏は、取引の一部を人が見るサンプルテストは監査基準で認められるが、全体を一定確度でチェックするデータ分析に監査基準はまだ対応しきれていない現状に「不合理も感じる」と述べ、レグテック推進には、本来の趣旨を重視した基準が必要と強調した。