規制対応のテクノロジーとエコシステムの潮流

RegTechが注目される本当の理由とは?

経済成長を促す規制緩和の動きの一方で、犯罪収益移転やテロ資金供与防止のために金融機関に課される規制が厳格化され、GDPR(EU一般データ保護規則)など、個人データの取得・処理・移転を制限する規制も強まっている。
予期せぬ規制違反の制裁金リスクにさらされ、より精度の高いコンプライアンスが求められる企業は、規制(Regulation)対応をテクノロジーで高度化する「RegTech(レグテック)」に注目している。
東京・千代田区で開かれた「REGULATION TECHNOLOGY FORUM 2019 進化する規制対応のテクノロジーとエコシステムの潮流」では、規制対応のあり方やレグテックについての専門家の知見、テクノロジーを活用した規制対応の事例などが紹介された。
主催:東洋経済新報社
協賛:有限責任 あずさ監査法人/KPMGコンサルティング

Keynote
レギュラトリー・サンドボックス
~「規制のサンドボックス制度」がもたらす規制対応と、ビジネスイノベーション~

内閣官房
日本経済再生総合事務局
参事官補佐
(新技術等社会実装推進チーム所属)
萩原 成氏

「規制のサンドボックス制度」の政府一元窓口として、多くの企業にコンサルを行っている、内閣官房日本経済再生総合事務局の萩原成氏から、第四次産業革命に伴う環境変化によって、公的セクターが「一方的」にルールを定めてきた規制のあり方に変化が求められる時代となっていると指摘。

また、政府の取り組みについて、規制全般を見直す規制改革推進会議、地域単位で規制緩和する国家戦略特区、規制への抵触がないことを事前に確認するグレーゾーン解消制度、事業単位で抵触する規制を緩和する新事業特例制度がこれまでに導入されてきたことを紹介し、規制改革を実現するためには、新事業に対するニーズや、想定される問題への対応策、社会受容性などを示すことが求められると言及。

2018年6月に導入された「規制のサンドボックス制度」については、「イノベーションを起こしていくためには、さまざまな新事業をローンチし、あるいはスケールしていくことが大切。規制に抵触する可能性があるとすれば、実証を通じて制度改正の根拠となるデータを収集する。プロジェクト単位の実証を迅速に行うことを可能とするため、規制のサンドボックス制度が導入された」と説明した。

萩原氏は、官民双方に有益なプロジェクトの提案を期待したいと発言し、日本経済再生総合事務局は、政府一元窓口として、新事業や実証の実施に向けて、官庁としては例を見ないほど、踏み込んだ形でサポートを行っている。社内で固まりきっていないアイデア段階でも構わないので、ぜひ相談を寄せてほしいと呼びかけた。

General Session
RegTechイノベーションの必要性とビジネスにもたらされる価値

有限責任 あずさ監査法人
金融事業部金融アドバイザリー部
マネージング・ディレクター
山﨑 千春氏

あずさ監査法人で規制関連のアドバイザリーを担当する山﨑千春氏は、各国で当局に巨額制裁金を課された金融機関の事例に触れ「規制があるから、テクニカルにコンプライアンス対応するという認識では制裁を避けられない」として、マネーロンダリングや租税回避などに金融システムが悪用されるリスクを排除するという規制の目的そのものに取り組む必要を示した。

ただ、高レベルのコンプライアンスを支える情報基盤整備には多額のコストがかかる。山﨑氏は、基盤を顧客体験向上にも役立てるという前向きな投資理由が求められると指摘。不法行為を行う顧客を把握するために顧客管理情報を収集する「Know your customer」から、プライバシーを保護しつつ顧客情報を徹底活用する「Know your data」への転換を訴えた。

さらに、「レグテックは、顧客を向いた基盤のバックでコンプライアンス業務を回す仕組みに活用できる」と述べ、取引データと顧客属性情報の組み合わせで、多数の疑わしい取引から「実は怪しくない取引」を識別する取引モニタリング最適化ツールなど、業務を効率化するKPMGのソリューション群を紹介した。

Case Session1
データ解析高度化等による脅威の特定とAML/CFT対応

じぶん銀行
執行役員
チーフコンプライアンスオフィサー 兼
チーフリスクオフィサー 兼
リスク管理ユニット長 兼
CS ユニット 副ユニット長
酒井 宏二郎氏

じぶん銀行の酒井宏二郎氏は、口座不正使用防止対策を説明した。ネット専業で個人向けの非対面取引に特化している同行は、架空口座開設や口座売買などによって、口座が犯罪等に利用されるリスク評価を実施。監督官庁に届け出た過去3年分の疑わしい取引約2万5000件の届け出事由のテキスト情報について、あずさ監査法人の協力で自然言語解析して、手口や行動特性を探った。

取引は口座開設、利用開始前、振り込み、出金の4段階に分け、脅威概念を明確化し、リスクを格付け。不正口座リストに掲載されている名義人など高リスクの脅威は開設時の謝絶など初期段階で低減する。

開設から時間を置いて詐欺等に使われる可能性が残る中程度のリスクについては、犯罪者の行動類型に基づくシナリオなどを使った取引モニタリングで検出を図るほか、在留期限を迎えた外国人に口座を閉めてもらうなどの継続的な管理で対応する。「当行のリスク特性を踏まえた対応を引き続き行っていく」と述べた。

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