SDGsを意識した行動が未来を変えていく 持続可能な社会をつくるために、今できること

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持続可能な社会を実現するために17の開発目標を示すSDGs。2030年までの目標実現を目指して、世界的に取り組みが行われている。日本でもその動きが活発化し、多くの企業でもSDGsに関する取り組みが積極的に行われるようになった。では、このSDGsを企業経営に取り入れることには、どのような意味があり、その結果として、どんなメリットが生まれるのだろうか。SDGsをグローバルガバナンスの観点から研究する慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科教授の蟹江憲史氏に話を聞いた。

――なぜ今、企業はSDGsに取り組むべきなのでしょうか。

蟹江 社会が激変期を迎え、将来の姿がなかなか見通せない中で、SDGsは未来の1つの形を示してくれていると考えられます。その意味で、企業経営においても将来、どの方向に進むべきかという、1つの指針として活用すべきだと考えています。

――実際、熱心に取り組んでいる企業も増加傾向にありますね。

慶応義塾大学大学院
政策・メディア研究科研究室
教授
蟹江憲史氏
慶応義塾大学SFC研究所xSDG・ラボ代表。国連大学サスティナビリティ高等研究所シニアリサーチフェロー、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授、レノバ社外取締役、日本政府SDGs推進本部円卓会議委員、内閣府地方創生推進事務局自治体SDGs推進のための有識者検討会委員などを務める

蟹江 これまでも持続可能な社会の実現に向け、環境問題に取り組んできた企業は少なくないと思いますが、SDGsは環境だけでなく、経済も社会も包括する概念であり、そこが特長であって、大きく門戸を開くきっかけでもあったと考えています。また、SDGsについて財界を挙げて取り組んでいることも大きな要因でしょうし、SDGsの呼びかけが始まって最初のG7の会合が日本であったため、政府が積極的に取り組んだこともタイミングとしてよかったと思います。

――海外と比較して、日本のSDGsの取り組み状況をどう評価していますか。

蟹江 企業だけでなく自治体も含めてスタートラインに立ったという点で、日本は進んでいると言っていいでしょう。他方、世界的に見ると、例えばダボス会議の世界経済フォーラムをはじめ、国連と連動する形でSDGsに関するイベントが欧州を中心に頻繁に開催されています。そこに集まる企業のほとんどは多国籍企業であり、SDGsに深くコミットメントすることでビジネスチャンスにつなげようとしています。これから日本の企業も積極的にビジネスに生かす方策を示すとよいのではないでしょうか。

――日本の企業がSDGsを経営に取り入れるメリットとは何でしょうか。

蟹江 SDGsは2030年に向けて、193カ国すべての国連加盟国(2019年6月21日現在)が合意している開発目標であり、2030年の世界の姿が描かれていると言っていいでしょう。だからこそ、先取りしてSDGsに取り組むことで、世界のマーケットをより獲得しやすくなるのです。人口減、少子高齢化の進む日本が、新たなマーケットを獲得していくためにもSDGsは共通言語として使えるメリットがあります。普遍的な枠組みであるSDGsにコミットメントすることで世界のマーケットへのアクセスがより容易になるのです。

――日本の企業では、具体的にどんな取り組みが行われているのでしょうか。

蟹江 現在、SDGsの取り組みを評価するアワードなどが国内でも開催されていますが、受賞企業は必ずしも大企業だけではありません。中小企業も積極的に取り組んでいます。大企業は事業単位で対応しているところが多い一方で、中小企業はトップの意思決定も速く、全社的に取り組み体制を構築しやすいというメリットがあります。自治体においても同様で、トップが強力なリーダーシップを持つところが先行しています。

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