SDGsを意識した行動が未来を変えていく 持続可能な社会をつくるために、今できること
――なぜ今、企業はSDGsに取り組むべきなのでしょうか。
蟹江 社会が激変期を迎え、将来の姿がなかなか見通せない中で、SDGsは未来の1つの形を示してくれていると考えられます。その意味で、企業経営においても将来、どの方向に進むべきかという、1つの指針として活用すべきだと考えています。
――実際、熱心に取り組んでいる企業も増加傾向にありますね。
蟹江 これまでも持続可能な社会の実現に向け、環境問題に取り組んできた企業は少なくないと思いますが、SDGsは環境だけでなく、経済も社会も包括する概念であり、そこが特長であって、大きく門戸を開くきっかけでもあったと考えています。また、SDGsについて財界を挙げて取り組んでいることも大きな要因でしょうし、SDGsの呼びかけが始まって最初のG7の会合が日本であったため、政府が積極的に取り組んだこともタイミングとしてよかったと思います。
――海外と比較して、日本のSDGsの取り組み状況をどう評価していますか。
蟹江 企業だけでなく自治体も含めてスタートラインに立ったという点で、日本は進んでいると言っていいでしょう。他方、世界的に見ると、例えばダボス会議の世界経済フォーラムをはじめ、国連と連動する形でSDGsに関するイベントが欧州を中心に頻繁に開催されています。そこに集まる企業のほとんどは多国籍企業であり、SDGsに深くコミットメントすることでビジネスチャンスにつなげようとしています。これから日本の企業も積極的にビジネスに生かす方策を示すとよいのではないでしょうか。
――日本の企業がSDGsを経営に取り入れるメリットとは何でしょうか。
蟹江 SDGsは2030年に向けて、193カ国すべての国連加盟国(2019年6月21日現在)が合意している開発目標であり、2030年の世界の姿が描かれていると言っていいでしょう。だからこそ、先取りしてSDGsに取り組むことで、世界のマーケットをより獲得しやすくなるのです。人口減、少子高齢化の進む日本が、新たなマーケットを獲得していくためにもSDGsは共通言語として使えるメリットがあります。普遍的な枠組みであるSDGsにコミットメントすることで世界のマーケットへのアクセスがより容易になるのです。
――日本の企業では、具体的にどんな取り組みが行われているのでしょうか。
蟹江 現在、SDGsの取り組みを評価するアワードなどが国内でも開催されていますが、受賞企業は必ずしも大企業だけではありません。中小企業も積極的に取り組んでいます。大企業は事業単位で対応しているところが多い一方で、中小企業はトップの意思決定も速く、全社的に取り組み体制を構築しやすいというメリットがあります。自治体においても同様で、トップが強力なリーダーシップを持つところが先行しています。