競争力を高める攻めの事業承継対策 会社をさらなる成長へと導くために

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―ファンドが譲り受けるパターンも多いと聞きました。

豊永 M&A自体を目的とするファンドが事業承継全体の中で大きなボリュームを占めるまでには至っていませんが、注目したいのは事業承継ファンドです。これは経営者が入れ替わる過渡期に経営を支えるファンドで、新しい後継者を探しているタイミングや育成期間において活用する企業が増えています。当機構のファンド事業部はこれまで288のファンドを組成しましたが、このうち事業承継ファンドも34あり、百社に近い事業承継に関わりました。ファンドを活用した事業承継は、確実に増加傾向にあります。

―選択肢が多くて、事業承継検討中の経営者も迷ってしまいそうです。

豊永 事業承継は経営のノウハウだけでなく、税制や個人保証などの多様な問題が絡みます。金融機関や税理士、公認会計士、中小企業診断士など関連する相談相手も多いですから、経営者は支援機関それぞれの強みを見極め、活用していくことが求められています。

私たちも、政府が各都道府県に設置する事業引継ぎ支援センターにおけるマッチングのサポートに努めてきました。過去8年間では、2400件のM&A成立実績があります。現在はさらに全国規模でのマッチングもサポートできるよう、データベース環境を整えているところです。

―事業承継に向けて、経営者はどのような準備をすればいいでしょうか。

豊永 アンケート調査では、後継者を見つけて育てるのに平均10年かかるという実態が明らかになっています。だとすると、経営者は自分が一線を退く10年前には準備を始めなければならない。後継候補者の説得や育成には時間がかかりますし、税制や資金面のことを考えても、できるだけ早く準備を始めるべきでしょう。

―最後に事業承継に悩む経営者へのメッセージをお願いします。

豊永 企業の収益力は、若い社長のほうが高いという民間調査機関のデータもあります。事業承継は企業や事業の承継、また、さらなる発展のために重要な課題ですが、加えて若い後継者への早いバトンタッチは、攻めの経営へシフトするきっかけにもなります。人や技術、のれんといったリソースを引き継ぐことで企業が存続・発展するばかりでなく、従業員の方々の暮らしや地域経済も安定します。そのような企業の集積は、地域ひいては日本という国の発展にもつながっていく。ぜひ広い視野を持って事業承継を考えていただきたいですね。

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